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城下町 アスミ2
トワの家に上がらせてもらった。リュウセイはまだ帰っていないらしい。俺は早速前世の話を聞こうとしたんだけど・・・
「おい、アスミ!ミイが繋がりっぱなしになるような契約精霊がいるってことは、その契約者とアスミもそういう関係になったのか?!一昨日まではそんな相手いなかったよな?てことは・・・山で?・・・まさか相手は山狼族っ??!」
「・・・正解」
「マジでっ?!本当に存在してたのっ?で、どんな子?可愛い?あっ、童貞卒業おめでとう!って、ん?ちょっと待て・・・ミイの感じからして、主導権は相手側か?年上のお姉さん?まぁ、アスミはそっちの方がいいかなぁ・・・」
「ストップ!待ってトワ、俺にも喋らせて!」
「おう、悪い。で?どんな女なんだ?その山狼族は」
「・・・男」
「そうか男なのか・・・って、はっ?お前、恋愛対象は女じゃなかった?」
「そうだったんだけど・・・前世の記憶を思い出したら、その時好きだったのは男の人で・・・俺、その人を山狼族の長にした小説を書いてたんだよ・・・」
トワが固まってしまった。そしてしばらく考え込んだ後、自分の契約精霊のオオヤマネコ、リンクにむかって言った。
「リンク、ベルと繋がってルイが今からウチに来れるか聞いて」
「もう繋がってるよ!だってこの前ルイに、トワに前世の記憶が戻ったって伝えた時、トワが来たらすぐにベルと繋がってって言われたもん。えっと、三十分後には行けるって」
リンクの言葉に今度は俺が固まる。だって、この世界のルイは次代魔王候補様なんだよっ?!そんな簡単に会える人じゃないんだ。
「ちょっと待って?!ルイって、次代魔王候補様がこんな所に来るの?俺なんかが会って大丈夫なのかよ?」
「こんな所で悪かったな。で、前世では俺と大学で知り合ったんだろ?ルイとも面識あるのか?」
俺は、大学でトワと友だちになり、リュウセイはもちろん、ルイとショウとカグラとも仲良くしていた話をした。
更にASURA先生のサイン会で、未発表の異世界小説の続編をルイとトワが書いている、という話を聞いた事。そして、俺にも書かせて欲しいと頼み込み、許可していただいた話もした。
そして、神生類のライブでケンショーさんに出会いライブハウスでバイトをするようになった事、ちょっかいを出され戸惑いながらも、ケンショーさんが気になって仕方がなかった事を話した。
「で、ケンショーさんを山狼族の長に設定して、あの異世界小説の俺編を書いたんだ」
真剣に話を聞いていたトワが何か喋ろうとした瞬間、二つの影が現れ、すぐに人と猫科の大型猛獣の姿に実体化した。
「ベルとリンクが繋がってたから、僕も話は聞いてたよ。この世界では初めましてアスミくん。ルイです。こっちは契約精霊のベル。ジャガーだよ。ミイは・・・まだあいさつ出来る状態じゃないね」
えっ?!マジでルイ?いや、ルイ様、次代魔王候補様?!ベルはすごい迫力だな。魔力の量が違うのが一目で分かる。町には大型猛獣の精霊は滅多にいないから、初めて見るジャガーは圧巻だった。
けど、すぐにリンクとじゃれあい始める。
うん・・・何かデカい猫だ。ミイと変わらないその姿に何だかホッとする。
「あっ、あの、初めまして。アスミとミイですルイ様」
「ルイでいいよ。だって前世では僕たち友だちだったんでしょ?」
小首を傾げる超絶美少年・・・って、同い年だから二十歳なんだろうけど、どこから見ても美少年・・・なんて言うか、前世よりキラキラ度が高い。次代魔王候補だからか?身分の違いかっ?
「いやいやいや、そんなわけには・・・」
「大丈夫だって。俺もルイって呼んでるし」
と、トワは言うが、俺にはこの世界で生きて来た記憶もあるんだ。次代魔王候補様なんて雲の上の存在なんだから。
「いや、だって、トワの事はルイ様も覚えてたから分かるけど、俺の事は記憶にないんだよ?ただの平民が次代魔王候補様に・・・」
「いいからっ!じゃないと前世の話もし難いでしょ?はい、今からは前世の僕のつもりで接する事。ん~これは命令ね?」
そう来たか?!なら、従わないわけには行かないじゃん。
俺は渋々了解し、改めてルイとトワに向き合い、こと細かく山であった事を話したんだ。
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