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山狼族の集落 アスミ2

 「それにさ、山狼族同士の子どもが欲しいなら、別にケンショーじゃなくてもそこのトシと作ればいーじゃん」 「っ!!だってあたしはケンショーが好きで・・・」 「けど、ケンショーはアスミが好きだし、トシはシーナが好き。どっちも片方だけしか好きじゃないなら同じ条件だよ? 『あたしはケンショーが好きなのにどうしてトシと子どもを作らなきゃいけないの?』って言うなら、ケンショーが断ったのも同じ理由だから理解出来るはずだよね?」 「で、でもケンショーの方が魔力も多いし、狼の精霊に選ばれる為には・・・やっぱりケンショーの子じゃなきゃ・・・」 「リューに聞いたけど、昔にトシとヨシの家系からも長は出てるんでしょ? 確かにケンショーの子が魔力を受け継ぐ確率は高いかもしれない。けど、トシの子がそれだけの魔力を持って生まれてくる可能性も決して低くはないよね?トシにもそこそこの魔力はあるんだし。 ほら、何の問題もないよ。 本当に山狼族の未来を憂うのなら、まずはすぐに同意してくれるトシと子を作るべきだ。別にヨシとでもいいけどね。 だいたいタイショーがシーナにケンショーとの子を望むのも、自分の血族からまた長を出したいだけなんじゃないの?」 最早シーナさんも反論しない。ミイの独壇場だ。俺もポカンと口を開いて見ているだけ。 「それにさ、犬科動物の精霊が一番、的な思想の精霊はこの世界に来て契約なんてしないと思うよ? 自分たちの世界でいれば、犬科動物の精霊しかいないんだから。 こっちの世界に来る時点で僕たち猫科動物の精霊とも、ドラゴンの精霊とも共存する気があるって事じゃん」 「・・・・・・」 ちょ、ちょっとミイさん?凄すぎませんか?そんなできる子だったっけ? 俺の出る幕がねーじゃん!! 「ぷはっ!!シーナの完敗ね。ミイ、やるじゃない。アタシはナンよ。よろしくね。 シーナも本当は分かってるのよ。ケンショーは自分を妹としてしか見ていないって。けど認めたくないのよねー。だから山狼族の未来とか言っちゃってるの。 けど、こんな可愛い黒猫ちゃんに諭されたら現実を見るしかないんじゃない? あ~ホント可愛いわ~しかもシーナを論破するほど賢い!最高じゃない!アタシはミイを認めるわよ?」 「ふにゃっ?!やめてよー」 シーナさんの契約精霊、ゴールデンレトリバーのナンがミイにじゃれついている・・・ナンがデカいからミイが襲われてるようにしか見えねーな。 「何をしている。ナン、消滅させるぞ」 ひぃっ!!リューが激おこだよっ?精霊って消滅させたり出来るの?てか、いつの間に来たの?? 「も、申し訳ございません、リュー様。ミイが、いえ、ミイ様が可愛すぎてつい・・・」 ナンの尻尾が垂れて丸まってしまっている・・・どんだけ怖いんだよっ!確かに威圧感がヤバいくらいすげーけど。 「ミイは私だけのものだからな。仲良くはしてやって欲しいが・・・触れるなよ」 「「はいぃっ!!」」 ナンだけじゃなく、ヤック(トシの契約精霊。ジャッカル)まで硬直してるよ。 「アスミ、もうツリーハウスに戻るぞ。おい待てリュー、繋がるな。すぐに完全憑依するから」 あーケンショーさんまで来ちゃったよ。 すぐにミイと繋がろうとしていたリューは不満そうにしている。 はいはい、今日はここまでね。 「シーナさん、トシさん、ミイが失礼しました。今日はこれで帰りますが、また来ますね」 「・・・・・・」 シーナさんからの返事はない。トシさんはケンショーさんに頭を下げた。  そのままケンショーさんに連れられて、シーアさんとヨシさんの元に戻る。 ん?シーアンとヨシミックになってる?いや、違うな。普通の憑依だ。 「ちょっとぉ!アスミちゃんもミイちゃんすごいじゃなぁい。アンとミックがヤックと繋がって一緒に見てたのよぉ。 ミイちゃんにど正論で論破されて、流石にシーナも目が覚めたんじゃないかしらぁ? そうよねぇ、長の、ケンショーの子どもだけが長になるってわけじゃないのよねぇ。ヨシとトシの家系からも長は出てるのにぃ・・・何故かわたしも何となく、ケンショーの子以外は狼の精霊と契約出来ないって思ってたわぁ」 「それは長老のせいだ。そう思わすようにお前たちを誘導していたからだ。 だが、オレは何度もシーナに言ったぞ?トシとの子でも狼の精霊と契約出来る可能性は高いってな」 けど、それでもシーナさんはケンショーさんしかいらなかったんだろう。だから耳を塞いだ。 「わたしも知らないうちに洗脳されてたってわけねぇ。ありがとうアスミちゃん、長老の呪縛から解放してくれてぇ」 「あー、俺、結局何もしてないんですけどね」 シーアさんに褒められたけど、ちょっといたたまれないぞ。 「アスミちゃん、それは違うぞ。ミイは完全憑依して繋がって、オレとリュー、そしてアスミちゃんの考えが分かったから、ああ言ったんだ。 あれはオレたち全員からの言葉だよ。ミイだけの手柄じゃねぇ」 ケンショーさんの言葉にミイも頷く。 「そうだよ~あの場でアスミが同じ事を言っても、シーナは反発して聞かなかったと思う。だから可愛い黒猫の僕が言ってあげたんだ」 「あぁ、ミイは可愛いからな。シーナも話を聞く気になったんだろう」 ・・・自分で可愛い言うな。リューも当たり前のように肯定すんな。 何か腹立つわっ!

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