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【これが僕らの運命。 でも、こんな形だってあっていいと思うんだ。】 「っ!ぁ…………」 「っ!?」 ーー見つけた。 〝出会って〟しまった、ついに。 高校の卒業記念に旅行してたロンドン。 その、観光地でもなんでもない沢山の人が行き交う普通の路上で、互いに真っ直ぐ目が合った。 ずっと……ずっと探してたんだ。 この世界でおとぎ話のように囁かれてきた〝運命の番〟。 出会う確率なんて奇跡に近いのに、周りの友人は案外直ぐ相手を見つけて僕だけが取り残されてて。 「ひょっとしたら僕にはそんな人いないのかも」なんて諦めてた。 なのに (あの、人だ、) 目線の先にいる、シルクハットを被った長身の男性。 遠目でも同じく驚いた顔をしてるのが分かって、直ぐに駆け出す。 (あの人……絶対あの人だ) 異国の地の全く知らない人。 なのに、まるで雷に打たれたかのようにその人しか見えなくなって。 「ぁ…っ、ぁの……!」 息も絶え絶えに目の前まで来て、まだ呆然としているその人を見上げた。 『……君が、私の運命か?』 「ーーっ、は、ぃ」 聞こえてくる、流暢な英語。 艶のある低い声に体の芯からギュッと熱くなる。 嗚呼 ようやく見つけた。 僕にも、ちゃんと運命のα(アルファ)はいたんだ。 おとぎ話やみんなの話みたいに、本当に一目で分かってしまった。 良かった…見つけれて、本当に良か……っ、 嬉しくて嬉しくじんわり涙が浮かんできて、それでも目を逸らすまいと懸命に見つめる。 と、 グッと奥歯を噛み締め、何故か苦しそうに顔を歪める目の前の人。 その手が被ってたシルクハットを取り、ゆっくり頭を下げた。 『ハッ、そうか…遂に出会ってしまったか……っ、 ーーすまない。 私は、君と番にはなれない』

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