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和樹SIDE 9
「今日はありがとな。お陰で助かった」
「礼を言うのは俺のほうだよ。すっげー俺得だったし」
じゃぁまた、明日学校で。アキラに別れを告げ自転車を漕ぎだそうとしたその瞬間、「ちょっと待て」と、呼び留められた。
何か忘れ物でもしたのだろうか? 不思議に思って振り返る。
イケメンにジッと見つめられるのはなんだか居心地が悪い。
なんだろう?と戸惑っているとアキラがフッと笑ってジャケットに入れていた財布の中から何かを取り出すのがわかった。
「今日のお礼だ。やるよ」
差し出された手に、つられて和樹も手を出した。そこに一枚のチケットが乗せられる。
「え、これって……」
よく見ると、それはいつか行ってみたいと思っていたテーマパークのペアの入場チケットだった。
「ダメだよセンセー。こんなの俺貰えない」
「いいから貰っとけって。透と行って来いよ。アイツ、意外とそう言うの好きだからさ。あ、俺がやったとか言うなよ? 後々面倒くさい事になるから」
「でも……」
返そうと思ったのに、アキラは悪戯っぽく笑うと、礼を言う前にひらりと手を振って去って行ってしまう。
本当にいいんだろうか? でも、貰っとけって言われちゃったし。
今更断るのも気が引ける。何より、このチケットがあれば透と遊園地デートが出来る。
「……ありがと、センセ」
小さくなっていく後ろ姿に、聞こえないのは承知の上でそう呟いて貰ったチケットをカバンの奥底にしまい込む。
「マッスーって遊園地好きなんだ……意外だな」
今日は自分の知らない透の姿を沢山知ることが出来た。そのどれもが新鮮で、胸がドキドキして、なんだか幸せな気分になる。
「さぁて、どうやって誘おうかなぁ」
今日、ここにきて良かった。 透のマンションがある辺りを振り返り、煌々と辺りを照らす満月に思わず目を細める。
先ずは透をデートに誘うプランを練らなければ!
「よしっ!」と気合を入れ直し、和樹はペダルを漕ぐ足に力を込めた。
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