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秘密の関係 10

「へい雪哉、パス!」 「……しっ、ありがと!」 綺麗にディフェンスの間をパスが抜け、雪哉の手にボールが渡るとすかさず、それをカットしようと相手が手を伸ばす。 だが、その手がボールを弾く前に、素早い動きで雪哉がフェイクを入れて躱すと、フリーになっていた和樹にボールを戻し再びシュートを放った。 「うぉっ、危ねぇ」 「ナイス、和樹」 リングに吸い込まれるようにして入ったボールに、2人はハイタッチを交わした。 その様子を少し離れた所から眺めていた透は、思わず苦笑いを浮かべた。 (アイツ、引退してからもまた上手くなってないか?) 2年に入ってバスケを始めた和樹には基礎的なレイアップシュートくらいしか教えていない。それよりもパス回しや試合の組み立て方などを徹底的に叩き込むのが優先だったからだ。視野が広く誰とでもすぐに仲良くなれる和樹にはPGが向いていると直感で思った自分を褒めてやりたい。 和樹が居るだけで全然チームの動きが違う。今まで通らなかったパスもよく通るし、他のメンバーが生き生きしているように見える。 雪哉は雪哉で、怪我の影響なんか微塵も感じさせないキレのある動きをしているし、見ているこっちがワクワクするようなプレーをしてくる。 そして何より、2人の連携は完璧だ。 もしかしたら2対5でもいけるんじゃないか? とすら思ってしまうほどに、彼らのコンビネーションは素晴らしかったし、二人とも楽しそうだ。 こうやって見てる分には和樹も普通の生徒と同じなのに……。 二人きりの時のアイツは本当に別人だよなぁ。 喰われてしまいそうな熱っぽい視線や、荒々しいキスを思い出して思わず顔が赤くなる。 って!何を考えてるんだ自分は! ぶんぶんと頭を振りながら思考を追い出す。こんなことをしていては他の部員に怪しまれるではないか。 気を取り直してコートの中へ目を向けると、ちょうど和樹が3Pラインからシュートを放つところだった。 ボールは高く弧を描き、そのままネットを潜り抜けるかと思われたがリングの縁に弾かれクルクルと回転しながらコートに落ちた。 それを、一足早く飛び上がっていた雪哉がキャッチし、体勢を整えてからダンクで仕留める。 「あー!! 惜しいっ!あとちょっとだったのに!!」 「どんまい、和樹。次は入るよ! ほら、切り替えて」 悔しがる和樹の背をポンポンと叩いて、自分の持ち場へ戻って行く雪哉の姿を見るとなんだか懐かしい気持ちになる。 透は無意識のうちに笑みを浮かべて、コートの中を縦横無尽に走り回る彼らを見つめた。

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