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卒業

それからほどなくして和樹達3年生は家庭学習期間に入り、学校で姿を見ることはぱったりと無くなってしまった。 あの日以降毎日のようにやり取りしていたメッセージアプリに着信は無く静かになったスマホを見ては、ため息が洩れる日々が続いている。 何度か卒業式の練習などで姿を見掛けた気がしたが避けられているようで顔を見る事すら適わなかった。 自分の蒔いた種だ。仕方ない事なのだと言い聞かせても胸の奥にぽっかりと空いた大きな穴は塞がる事は無かった。 そして迎えた卒業式当日の朝。 透は、朝早くから学校にやって来ていた雪哉から部室へと呼び出しを受けた。 「よぉ、萩原。お前、A大の推薦蹴って橘のいる大学に行くんだってな。 勿体ないなぁ。A大に行けば将来は半分約束されたようなもんだったのに」 「……いいんです。僕は元々、バスケは高校までって決めていたので。プロになって活躍することを目指していたわけじゃないし」 あぁそうか。雪哉は入学当時からそういう奴だった。物凄く実力があり華があってスター性を秘めているのにどこか控えめで、貪欲性も闘争心もない。 本気でプロになりたくてがむしゃらに頑張っている選手達からすれば、面白くない存在だったろう。 「大学で、先輩と一緒にインカレ優勝目指します。その先の事はまだ決めてないけど……」 そう言って、懐かしそうに部室を眺める横顔は、いつもの頼りなさげな雰囲気ではなく、どこか凛々しく見えた。 雪哉の表情を見ていると、透も何となく微笑ましい気分になると同時に少し羨ましい気持ちが沸き上がる。 「先生。本当に……本当にこのままでいいんですか?」 「ん? なんだよ急に」 「しらばっくれないで下さい。好きだったんでしょう? 和樹の事」 「……」 ハッキリと単刀直入に切り込まれ返答に困る。

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