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第12話

「……」  五島は目を覚ますと、仰向けから身を横に向けると、目を閉じる前までのことを思い出した。  確か、昨日は23 Futuresの新年会をしていて、飲食代の割り率を賭けた双六をしていた。 そして、その双六をゴールする手前で、五島は三浦によってイかされてしまったのだ。 「あっ……」  自らの痴態を思い出すと、五島の顔は朱を帯びる。よりにもよって、三浦に……。 「(でも、助けてくれたんだよな……嫌だった筈、なのに……)」  五島は少し冷静になると、ベッドから起きあがろうとする。  だが、ベッドから起きる前に五島の部屋のドアがガチャっと開いた。 「(三浦……?)」  九岡や六川ならまずノックくらいするだろうし、ちらりと暗めの金髪が見える。  間違いなく三浦で、水の入ったペットボトルと皮の剥かれた林檎、それに何かのメモを持っていた。 「……」 「……っ!」  水の入ったペットボトルとメモをベッドサイドに置く三浦。  すると、三浦は寝たふりをした五島の頭を撫でた。 「(えー、どういうこと?)」  それはいつも何かと対立している三浦らしからぬ行為で、五島は困惑してしまう。 「……」  三浦はひとしきり、五島の頭を撫でると、静かに五島の部屋を出て行く。 「(変なものでも食ったのかもな……って、手紙手紙)」  そこには六川の名前で、三浦と九岡と例の双六のお祓いに行って、ついでに三浦の初詣をしてくるということが書かれていた。 「って……これ、六川の字じゃないじゃん」  六川の字を真似てはいるが、六川は筆跡はちょっと癖があり、少しだけ丸かったり、角張ったりしている。それに対して、三浦の普段の筆跡はハネハライがしっかりしていて、意外にも整っていていた。 「(……って、こんなこと、してる場合じゃないな)」  五島は急いで黒いカーディガンとシャツ、ベージュのスラックスを履くと、コートを着る。 「待ってよ、俺も行く」  五島は忘れずに23 Futuresの鍵を閉めると、先を神社に向かって歩いていた三浦達を呼んだ。お祓いに、三浦と九岡はバイトで行けなかった初詣、六川は引き忘れた御神籤をするらしい。 「去年は大吉だったけど、今年はどうかな?」 「大吉か。ロクっぽいね」 「そう? キューちゃんは?」 「うーん、半吉とか?」 「え、そっちの方が珍しいじゃん」  六川と九岡の御神籤の話には入らず、三浦は2人の後方を歩いていた。  そう、まるで、五島を気遣うように。 「あ、あのさ……」 「ん?」 「昨日は、ありがとう」  五島は辿々しくお礼を言うと、三浦も「おう」と言い、それ以上は突っかかってこなかった。

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