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「飴井ちゃんさ、今日もさ男に告られたってまじ?」
帰り道。
最近お気に入りのツッチーにガバリと肩を抱かれた。
「えぇ〜なんで知ってるのっ!?」
「結構噂になってるよ、ウケるんだけど!」
(噂…だと……?)
なにそれ最悪なんだけど、嘘でしょ??
同い年の同じ学年ってだけで、見た目も性格も完全に真逆。僕何処かで貴方とお会いしましたっけ?ってレベルに別世界の住人。なのに、あんなのと噂って……
いや意味わかんない。
そもそもの始まりは、靴箱に手紙が入ってたという極めてベタなもの。
どんな人かなーとルンルン気分で指定場所に向かったら、何故かもさ男が待っていて……
(あぁ本当、人生最大の汚点)
……しかも。
「あいつ絶対飴井ちゃんの嫌いな〝童貞〟でしょ。
あれは振られて当然だって、相手の好みくらい知っとけって話なー」
「本当それ!もーやだぁ〜」
そう、もさ男は見るからに童貞。というかもう童貞臭がしてくるくらい完璧な童貞。
童貞は嫌いだ。エッチの時痛いし何も気持ちよくない。
(ハジメテはさっさと何処かで捨てて、しっかり経験積んで来いってんだ)
僕童貞に抱かれる趣味ないし。
っというか男って女より抱くの難しいんだからな。
最早女抱いてるの前提で、ある程度男も食っとけって話だよ…ったく……
「あーあー飴井ちゃんクソへこんでんじゃん。ほらおいで〜」
「うぇぇ〜ツッチー!」
「よーしよし災難だったなぁ。
ほら、飴ちゃんいるか?」
「いるっ!!」
ポケットから出されたのは、僕のお気に入りの棒付きキャンディー。
あーんと口を開けると、苦笑しながら袋を取って食べさせてくれる。
「ん〜美味しい〜〜っ!」
「ははっ、飴井ちゃんまじ可愛いよな」
「えへへ〜」
キュッと手を掴むと握り返してくれて、体ごとぎゅぅっと抱きついた。
キラキラしたものが好き。
見てて幸せになれるような……そんなふわふわしてうっとりするようなものが好き。
あいつは全然キラキラしてないし、ふわふわもうっとりも皆無。しかも童貞。
クシも通らないようなグシャグシャの髪して……あの眼鏡もちゃんと見えてるの? あ、もしかして告白の相手間違ったとか??
(ま、ちゃんと断ったし忘れるのが1番)
「ねぇねぇツッチーキスしよっ?」
「ん? いいぜ、ほら」
チュッと直ぐに重なる唇。
街中? 男同士? 関係ない関係ない。
僕見た目こんなだし、女の子より可愛いし?
(あ、今あの人と目が合った)
スーツ姿のサラリーマン。
目だけで微笑みかけると、驚いたようにビクリと肩を揺らされた。
あはは可愛い。こういうの慣れてないのかな?
ツッチーいなかったら連絡先聞いちゃってたかも。
(なぁんてね)
嘘嘘。
でもあの人かっこいいし、僕のお気に入りに入れてもいいかもね。
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