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「エリスー!」
「ツバメ!!」
ソワソワ待っていた廊下の影に声をかけると、すぐに飛んでくる体。
「ツバメ、大丈夫だった!?」
「問題ない。俺があいつに負けるかよ」
「〜〜っ、ツバメ!」
「ぅわっ、分かった、分かったから締めんな!」
ちゃんと折り合いがついた話し合い。
もう大丈夫。俺とエリスを邪魔する奴はいない。
(なーんか、これあれだな。エリスの両親に上手く掌で転がされた感)
もしかしたら、向こうの両親はこうなることが分かってたんじゃないだろうか。
だからこいつをここに置いて、俺と会わせたんじゃないか?
(ま、もしそうならラッキーじゃん)
だってもう交際許可の返事は受諾済みってことだろう?
「ね、ツバメ。明日から僕たち部屋一緒?」
「だな」
「もう会いに行かなくてもいい?」
「あぁ。でも働くから一緒に居れる時間は減るだろうな」
「なら僕も一緒に働く!」
「いや、お前には無理だ」
「えぇ? そんなのやってみないとわからないよ!」
「分かるから」
明日から一気に騒がしくなるんだろう。
俺が過ごしていた現実主義的日常は少し…いや、大分崩れ去って、でも自然と笑いが出るような日々へと変わって。
「……なぁ、エリス」
「ん?」
「俺のこと、ちゃんと愛してくれるか?」
次はちゃんと、愛されたい。
ただ真っ直ぐに、自分の愛する人から。
「ふふ、もちろんっ。
いっぱいいっぱい愛してあげるからね!」
あの日パレードで見たような腕への抱擁。
それを解いて、両脇に手を入れ自分より小さな体をグイッと持ち上げた。
「わぁ!」と驚いたように笑う瞳は、鮮やかなピンク色。
(大丈夫、俺は〝ツバメ〟だ)
自分の住みやすい環境を探す鳥。
だが生憎俺は人間。
なら、探すんじゃなく環境そのものを変えられる筈だ。
これまでみたいに。
楽しそうにはしゃぐ声は幸せそうで、眩しくて。
地面へ降ろす前に、その口元へキスを落としたーー
〜fin〜
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