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ー鼓動ー5

「あ、あー……えーと……」  俺の方は相変わらず雄介のその言葉に視線を合わせられないでいたのだが、雄介の方はそんな俺の事は気にせずに、いつもの笑顔で、 「望ん事、十分俺は分かっておるからなぁ」  そう言って雄介は俺の腕を引いてきて気付いた時には雄介の方へと俺の体は引き寄せられていた。  いきなりの事で俺の体勢が崩れる。  だがそうしてくれた事で俺の上半身は完全に崩れてしまい雄介の胸の中へと収まっていた。  そういう風にしてくれた事で、聴こえて来たのは雄介の鼓動だ。  それは俺からしてみれば心地いい音で俺の方も安心出来る音でもある。 「ぁ……生きてる……」  って気付いた時にはもう無意識のうちに俺はそう呟いてしまっていた。  それが雄介の耳に届いていたのか雄介は、不思議そうな表情で俺の事を見つめていたような気がする。 「……生きとる?」 「あ、え? いや……あー……な、何でもない、何でもねぇから!! 職業柄そう言っちまっただけなんだからよ」  きっとそう慌てて答え更に顔を赤くさせてしまったのだから、雄介には俺のその行動で色々な事がバレバレだろう。  だけど雄介っていう人間は突っ込まず、優しく俺の頭を撫でてくれるだけだ。  それも何だか今は心地良く感じる。  きっと猫がご主人様に撫でてもらえている気分と同じなんだろう。 「ええんやって、無理せんでも。 ホンマ、今の俺っていうのは、望の事十分分かってるつもりやしなぁ」  そう優しく諭すように言って来てくれる雄介。 「でも、本音は素直な方がいいんだろ?」  そうだ。 いつか雄介はそんな事を言っていたような気がする。 「そんな事はあらへんよ。 だってな、俺はどんなお前でも好きなもんは好きなんやからなぁ。 前にも話したやんか。 もう、俺はどんな望であってももう二度とお前の前から消える事は無いってな。 あの望は記憶喪失になった直後にそう誓った筈やで」 「あ、ぅん、そうだったなぁ」  久しぶりにそんな事を言われて、雄介の事を試した俺が馬鹿みたいにになってくる。  恥ずかしさで顔を俯けていると、 「……で、望が俺の事を起こしに来るのって珍しいんと違う?」 「あ、え? あ、それは……和也と朔望に言われてだなぁ……」  そう慌てたように答える俺。 ホント、こういう話っていうのは恥ずかしくて今すぐにでも、この場から去りたい位だ。 そんな俺でも雄介は話を続けてくれる。 「ま、確かに望が俺の事を心配しておっても、起こしにまでは来てくれへんと思ってはいたけどな」  そこで雄介は言葉を一旦止めたという事は、きっと俺の言葉に何かこう引っかかる事があったのであろう。 「へ? え? 和也や朔望に言われたた!? はぁ!? え? さ、朔望!?」 「ああ、さっき俺が起きた時に外で体を伸ばしてたらさぁ、朔望がここに来たみたいなんだよなぁ」 「はぁー、ホンマ、朝からめんどいのが二人もおるんか?」  そう雄介は半分ため息混じりに言っていた。 ってか、雄介も朔望はめんどくさいって思ってるんだな。 そこに心の中でクスリとしながらも俺は、 「二人って、和也もなのか?」 「え? あ、そうやけど」  そうあっさりと答える雄介。 「へ? 和也って雄介からしてもめんどくさい奴だったのか!?」 「ああ、ぅん、まぁ、若干な。 いやぁ、正確には和也単体でっていうんやったら、ええねんけど、朔望ととなると、めんどくさそうやなぁーって思ってな」 「ああ、そういう事な」

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