25 / 824

ー鼓動ー25

「どう? これが僕が言っていた勉強会。 嘘ではなかったでしょう?」 「え? あ、ああ」  寧ろ俺の方が驚く事ばかりだ。  何年か前、朔望よりも先に歩夢の方が帰国してきていて歩夢は俺につきまとっていたのだけど、本当にその時の俺っていうのは全くもって歩夢には興味なかった。 だから学校の成績も分からなかった程だ。 もしあの時歩夢に対して普通に接していたならば、もしかしたらではあるのだけど歩夢の成績を気にしていたのかもしれない。 「だってさ、兄さんと今まであまり関わってなかったんだから、僕達の事、あまり知らなかったって事でしょう? だから、勉強会をしてあげたんだ。 ほら、兄さんの事は僕達からしてみたら興味あったから春坂病院にはちゃんと資料として兄さんのやった手術のDVDとかあったから見てたけどさ、兄さんは僕達のを見た事なかったでしょう?」  ……あ、そっか。 朔望達は春坂病院で今でも働いているから俺の見れたのかもしれないけど、お前等のは俺が見れてなかったからな。 「それでも、兄さんは天才って言われてたのかな? だってさ、兄さんが初めて手術した時のDVDが残ってたんだもん」  そう言うと朔望はネットの検索窓でURLを打ち込み、春坂病院スタッフオンリーで見れるサイトを開いて来る。 そしてスタッフが手術した動画を見つけると、そこには誰が手術したのか? っていう名前まで載っていた。 「え? ぇえええ!? ちょ、ちょっと待てよ、それ、マジで俺が初めて手術した時の動画なのか!?」 「うん! そう! これ春坂病院の倉庫に残ってて、僕がこのサイト作って入れておいたのさぁ」 「はぁ?! お前がこのサイトを作った!? はぁ!? って、この動画を見るんじゃねぇぞ!」 「見るな! って言われても、もう、僕は見ちゃてるけどね。 うん! 確かに兄さんのメス捌きは凄いよね!! 初めてっていう感じがしないんだけどなー」 「え? あ……そ、そうじゃなくてさ、俺の初めての手術の動画なんか恥ずかしいからっ! ってか、もうそれ削除しろよっ!」  なんでコイツはこんなサイトを作ったのであろうか。 例えそれがスタッフオンリーのサイトだとしても俺からしてみたら恥ずかしいしか出て来ない!  ……って、いや、マジで昔俺が手術した動画なんてあり得ねぇし! マジで誰かに見られたら恥ずかしいんだからなっ! 朔望は上手いって言ってくれてるけど、俺的には無理だっつーの! 特に雄介になんかは見せたくない! あ、でも、勉強になるんなら……いやいや……そんな恥ずかしいもんなんて見せたくねぇからっ!  そんな事を朔望とやりとりをしていると、洗濯を干しに雄介がこのリビングへとやって来る。 「……って、朔望と望は何してるん?」 「あ……いやぁ、何も、ただ、兄弟でふざけてるだけだからさ、気にすんなよ」  そう俺がどうにかして誤魔化そうとしているのに当然、朔望はそれを邪魔して来る訳で、 「え? 今ねー、サイトで望兄さんが初めてやった、しゅ……」  朔望の口が見事に俺が雄介に隠そうとしていた事を言おうとしているもんだから、朔望の口を手で封じる。  そう朔望の口は見事に封じる事が出来たのだが、それでもその事を喋る奴がもう一人いた事を忘れていた俺だが声がした方は隣りにいる歩夢ではなくて、 「ん? 春坂病院のスタッフ専用のサイトを朔望が作ったんだと、それで、そこに、昔、望が初めてやった手術の動画があるんだってよ」  そうその事を話したのはキッチンでお皿を洗っていた和也だ。

ともだちにシェアしよう!