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ー鼓動ー33

「ほな、今日は寝ようか?」 「……え? あ、ああ、そうだな」  考えて事をしていた俺はワンテンポ遅れて返事をしていた。  そして最近の雄介っていうのは本当に俺に何もして来ない。  楽な反面、そりゃ恋人なのだから寂しい感じもする。  ま、そこは仕方ないと言えば仕方がないのかもしれないのだけど。  俺達というのは仕事をしているのだから気が休まる時というのは、この島で働いている限りは殆ど無いに等しい。  こうして寝ている間にも、もしかしたら患者さんが来るかもしれないのだから。  確かに今までそういう事というのはなかったのだが、最近、島の人達が診療所の方にも来るようにもなってきて、島の人達とも交流出来るようになって来たのだから、夜に島の人達の誰かが異変があった時には俺達の事を頼って来てくれるようにもなったのかもしれない。 前よりももっともっと気を張っていなければならないようになった気がする。  しかし俺だって、たまには雄介とイチャイチャとしたい時だってある。  こんなに近くに好きな人がいるのに何も出来ない俺達。  雄介曰く今は恋人が近くにいるだけで、十分だとは言っていたのだけど……。  こんなにも雄介に熱を上げてしまっているのは俺だけなのか? とたまに心配になってしまう時がある。  こんなにも俺の方は雄介の事が好きでたまらないのに、本当に今の俺達にはそんな暇な時さえない状態だ。  やっぱり島になんか来なきゃ良かったのかな? だって春坂病院で働いていた時の方が遥かにのんびり出来ていたと思えるからだ。  仕事を終えて家に帰宅してくれば、そこはもう完全なプライベート空間となっていた。 例え自分が担当している患者さんの容態が急変しても誰か他のお医者さんがいるのだから応急処置等をしてくれている分、気持ち的に安心感はあったからなのかもしれない。 だけどこの島ではそうはいかない。  だからだ。 だからこうのんびりとした時間が取れてないって思うのは……。  でも逆に考えれば雄介が医者になったきっかけだって島で働くもう一人の医者を考えてくれって親父に言われて、雄介がなってくれるって言ったからな。 そうなれば本当に俺は雄介と働く事が出来るんだし。 そういつか言っていた俺。 『雄介と一緒に働いてみたいなぁ』と……それは昔言ってた時というのは夢でしかなかったけど今は雄介が医者になってくれて夢が叶ったって所かな?  でもその間っていうのは俺達というのは何度も話し合いを続けて来た。 雄介が最初、医者か看護師になりたいと言っていた頃というのは本当に俺的には反対だった。 だってそれは雄介には決断力も無いようにも思えたし頭の方も出来るのか? っていうのが心配だったからだったからなのかもしれない。 でも雄介は数ヶ月勉強しただけで医学部に合格する事が出来たし研修医として俺と一緒に外科で働いている時というのは最初真面目に見えてなかったのだけど慣れてくると決断力も急に上がって来たようにも思える。 それに目が真剣な目つきになってきたようだった。 本当それに俺が考えていた以上に雄介は仕事熱心で真面目で、そこに安心も出来た。 そう雄介には医者として任せられるようになっていたという事だ。  後はこう仕事している時には普通の医者と一緒で俺が相談すればちゃんと真面目に相談に乗ってくれるという所だろうか。 ホントそこも頼りになる所だ。 もしあの時雄介が医者になってくれなかったら? 俺の心に今みたいなゆとりというのは生まれてなかったかもしれない。

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