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ー鼓動ー50

 暫くすると部屋の気温もエアコンのおかげで落ち着いて来て、雄介が安堵するかのようにひと息吐いていた。 「この季節に来るんじゃなかったわぁ」 「え? まぁ、確かにそうだよな」  落ち着いて来た途端に俺の方は緊張してきてしまったような気がする。  今というのは完全に雄介と二人だけという環境。  ソファで一応距離は保っているものの、緊張の為か俺は膝と膝を合わせてそこに手を置いたままで固まってしまっていたのだ。  完全に今の俺というのは雄介の事を意識してしまっているという事だろう。  二人の間に沈黙が流れている中、時計の秒針や蝉の鳴き声、車の走る音とさまざまな音が俺の耳へと入ってくる。  雄介の方も言葉を発しない所からみると少し緊張してしまっているのかもしれない。 「あ……やっぱ、買物行こか?」  雄介はこの空気を読んだのか、瞳を宙へと浮かせながら行っていた。 「え? あ、ああ、そ、そうだな」  案の定、俺の方も緊張している状態だ。 だってその証拠に言葉からして上手く発せてないのだから。  そう俺が返事すると雄介の方は立ち上がる。  その姿を俺は見上げていると、 「ん? 買物行くんやろ?」  そう笑顔で言って来る雄介の姿が入って来る。 「え? あ、うん」  でも俺の方はまだ緊張しているからか未だに立ち上がれないでいた。  緊張するって、こんな事だったっけ?  まるでお化けかなんかに出会って、動けないのと一緒な位、俺の体は固まってしまっているようだ。  緊張する、なんて事、本当に何年振りなんだろうか?  そんな俺の事を雄介は心配してくれているようで、 「どうしたん?」  そう不思議そうな表情で俺の事を見つめて来ていた。 「え? あ、うん、大丈夫だから」  緊張し過ぎて自分でも何を言ってるのかさえ分からなくなって来ているのかもしれない。  緊張している時って、頭の中はパニック状態で完全に真っ白な状態になってしまっているのだから。 「大丈夫な訳ないやろ? 流石にこの暑さで熱中症になってしまったのか?」  そう言って雄介は俺に近づいて来る。  向こうからしてみたら俺の事を心配して近寄って来ているのかもしれないのだけど、俺からしてみたら今は寄って来て欲しくないっていうのかなんていうのか。

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