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ー鼓動ー51

 そして俺の方も立ち上がる。  すると雄介と視線が合ってしまった。 しかも思いっきり間近でだ。 「ぁ……」  久しぶりに雄介とこの距離で視線が合ってしまったような気がする。  いや今まで何度もそういう事はあったのかもしれないのだけど、忙し過ぎてこんな事も考えた事もなかったのかもしれない。  だけど本当にその忙しい時間から開放されて今は二人だけの時間。  だから完全に俺は雄介の事を意識してしまっていたという事なんだろう。  そう思っていると雄介は俺の体を抱き締めて来てくれる。 「ぇ? あ……」 「なんやろ? 望の事、急に抱き締めたくなった」 「え? あ……うん……」 「俺は今でも本当に望の事が好きだと思うとる」 「え? あ……うん……」 「もうココ何年もこの想いっていうのは変わって来てへんで」 「ぅん……あ、ん……俺も……そうだから……」  その言葉に雄介は俺の事を不思議そうな表情で見つめて来る。  俺はその雄介の行動に軽く睨み付け、 「もう、そろそろ……俺が素直になった事に慣れろよな」 「へ? あ、そういう訳じゃなくてなぁ」  そう言って雄介は瞳を宙へと浮かばせるのだ。  って事は……雄介は何か俺に嘘を吐いてる? 「……嘘。 そこはまだ慣れてねぇって雄介の顔に書いてあるんだからな」 「ぷっ! 望にそないな事を言われるとは思うてなかった事やわぁ。 ま、流石にな、望が素直になってきてくれるのは嬉しいねんけど、こっちがそのそういう事に関していきなりっていう感じやと、未だに戸惑っていしまうっていうのが本音なんかな?」  そう言って来る雄介というのは本当に嘘偽りっていうのは無さそうだ。  ホント俺は雄介のそういう所も好きなのかもしれない。 「そろそろ、本気で慣れろよなっ! それは前に話しただろ?」 「ま、そうやねんけどな。 無理なもんは無理なんやって。 あ、それは、俺が無理なだけあって、望はそのまんまでええからな、だってな、望がせっかく自分の性格を直そうと思うて頑張っておるのにそれを止めてしまったら、今までの努力が無駄になってしまうっていうんか」 「大丈夫だ。 分かってるって」 「あ、スマン……俺、こういう時、下手くそで」  そう雄介は俺に向かって謝って来てくれる。  ……別に大した事じゃないけど、やっぱ、雄介の優しい所も好きな所かな? 「ほら、俺にばっか謝ってないで、買物に行くんだろ?」 「あー! そうやったな!」  そういつもの雄介に戻ったのか、そう元気な声で言うと俺から離れて行ってしまう。  ……ちょっと寂しい気もするんだけど。 とりあえず今は買物に行かないとだからな。 こういう事は後でゆっくりとしたいしな。

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