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ー鼓動ー70

 そして次の朝。  俺はいつものように目覚めるのだが、今日はもう隣りには雄介の姿はなかった。  分かってる。  雄介はさ、毎朝、俺よりも早く起きて朝食を作ってるって事もさ。 もうアイツと何年いると思ってんだよ。 でも、たまには一緒に起きたい朝だってある。 まぁ、そこはもう俺が悪いのか? 雄介が早く起きて朝食を作りに行っちゃうのが悪いのか? そこは分からないんだけど、まぁ、どっちも悪いのか。 ま、そこは仕方がない。  そして脳も起きてくると体全体的に起きて来て朝食を作る音と共にいい匂いも俺の鼻をくすぐる。 「だよな。 やっぱ、雄介はこうやって朝早く起きてご飯作ってるんだよな」  そう俺は独り言を漏らすと半身を起こして腕を伸ばすのだ。  たまにはベッドの上で雄介とのんびりしたいと思ったのだけど、どうやら雄介の方は違うようだ。  もう恒例っていうのか癖っていうのか任務っていうのか……ま、雄介が好きでやってくれてるんだから、それはそれでいいのだけど。  俺は起きてる私服に着替えると階下へと向かう。  そしてリビングに通じるドアを開けると既にテーブルの上には料理を並べ始めている雄介の姿があった。  俺がリビングに入って来たのが分かったのか雄介は俺の方に視線を向けると、 「おはよう」  といつものあの笑顔で声を掛けて来てくれるのだ。 「ああ、おはよう」  俺はいつものように席へと腰を下ろすと、 「今日は簡単なもんでスマンな……トーストに目玉焼き位になってもうたんやけど」 「へ? そこは別に気にしてねぇんだけどさ。 なんていうのかな? たまには朝食作るのをサボってみたいな? とかって思わないのかな? って思ってな」 「あ、いや……俺の方は元から飯作るのとかっていうのが好きやったし、嫌やなぁ、なんて思った事ないしな。 寧ろ、みんなが笑顔で美味しいって言ってくれたら、俺の方は満足やし、別にサボりたいって思った事はないんかな?」  とテーブルの上にご飯を並び終えると雄介の方も椅子へと腰を下ろすのだった。 「そっか……元から好きだったって事だったのか」  その後二人でいただきます。 挨拶し終えると雄介は再び語り始めるのだ。 「まぁ、ご飯一人で作り始めたのは高校生の頃やったからかなぁ? 高校生の時期っていうのは食べ盛りやったし、勉強とかっていうのも夜中までやってるとお腹空くやろ? せやから、ネットで調べてちょいちょい作っておったんやけどな。 まぁ、本格的に作り始めたっていうのは消防士になってからやったかなぁ? もう、その頃には栄養云々の事も考えなきゃアカンかったし、栄養の事も色々とネットで調べて、時間がある時には自分で作っておったしな。 もう、自分で作るのは癖みたいなもんやな」 「へぇー、そうだったんだ」 「それに、一回望に言うた事があったやろ? 消防士っていうのは、まず体力が必要やからなぁ。 それで、食べ物でも体作っていかなきゃアカンかったしな。 コンビニ飯っていうのはたまになら良かったのかもしれへんけど、しょっちゅうは食べてへんかったからなぁ。 ま、今は栄養の事も考えとるコンビニ弁当も増えたけどな」 「うん……まぁな。 だけど、雄介が医学部に入ってからは、自分で作る余裕さえもなかったんじゃねぇのか?」 「いや……そんな事はなかったで、料理は趣味みたいなもんやったから、気分転換に作っておったしな」  その一言で思い出した事があったのか、望は視線を天井の方へと向けると考える。 そうだ確かに毎日ではなかったものの俺が家にいる時というのは雄介に会う事が無くても雄介は何か作って机の上に置いてあったのかもしれない。 「あー! そう言われてみればっ! あった! あった! 朝なんか特に……俺が仕事の日でも料理だけはテーブルの上にあったな」 「せやろ? 食事だけは摂らなぁー、アカンよ。 っていう意味で置いて行ってたしな」 「んじゃあ、雄介は医学部に行ってる間も作ってたって事なんだよな?」 「そういうこっちゃ」 「しかし……あん時っていうのはホントすれ違いな生活をしていたような?」

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