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ー鼓動ー92

 でもあれから何年も経ってるのだから、その時のトラウマになった事というのは消えているのかもしれない。 「あのさぁ、デートで思い出したんだけど。 あのデパートっていうのはどうなったんだろうな?」 「あ、そういや忘れておったわぁ、もう、あれから何年経ったんだっけかな?」 「俺はもう覚えてないんだけどさ。 流石にもう違う建物が建ってしまってるよな?」 「確かに、暫くあの場所に行ってなかったしな。 寧ろあんまデートとかも出来てなかったしな」 「え? あ、まぁ、そういう事だ。 でも、それからそう、デートしてる暇だってなかったんじゃなかったのか?」 「まぁな、忙し過ぎてって感じやったしなぁ」 「そうそう! 俺達っていうのはホント忙しかったし、しかも、その間にも色々な事があったしな」 「まぁ、それは言えてるのかもしれへんな。 しかも、あの後の望っていうのは記憶喪失になってまったし」 「え? あ、まぁ、そう」 「ほんで、俺は望の事を置いて、レスキューの試験に行ってもうたしな。 ま、なんだかんだで言って、ホンマ俺達っていうのは忙しかったしな」 「ま、そういう事だよな」  確かに今思い出すと懐かしい事ばかりだ。  その時代は本当に大変な事だったのかもしれないのだが、今になるとそれはそれで思い出に変わる。  もしタイムマシンがあって過去を変えられる事が出来たならば、そこを変えたいと思うのであろうか?  それで、もしその事を変えてしまったら!?  今現代において、雄介と俺は恋人でいられたのか? っていうのは分からない所なのかもしれない。  いや過去があったからこそ、今俺達というのは未だにこうしていられているという事だろう。  そこで俺は雄介に聞いてみる事にした。 「今さ、フッと思ったんだけ、例えば、今タイムマシンっていうのが目の前にあって、もし、過去を変える事が出来た場合、雄介は過去を変えたいと思うか?」  その俺からの唐突な質問に雄介の方は複雑そうな表情を浮かべると、 「え? あ、そやな?」  その俺からの質問に雄介は手を顎に当て本気で考えてくれているようだ。

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