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ー鼓動ー91

 二人でそう決めると、その辺にあるパスタ店へと入って行くのだ。  例えメインのお昼が過ぎていても行列は出来ていた。  こういう都心部での飲食店というのは何時に来てもお客さんが途切れるって事はないのであろう。 メインの時間いうのは完全に正午過ぎなんだろうが、それでも沢山の人々が行き交う街なのだから、サラーリマンOLの他にも遊びに来てる人達だった多くいるのだから。 特に遊びに来ているだけの人物というのは、全然時間があるのだからある意味何時に食べても大丈夫だという事だろう。 だから余計に行列が絶える事がないのかもしれない。 「やっぱ、この辺で食べるって言うたら、並んで食べるしか無いみたいやんなぁ」 「ま、そういう事だな」  俺達はもう並ぶ覚悟で来ているのだから諦めたような会話をしているっていう感じだ。 「ま、ええか、望と待ってるんやし」 「……へ? それって、どういう意味だ?」 「望と居るから飽きないっていう意味やって」 「……ん?」  それでは、まだ納得がいかない俺。 「こうやって、ゆっくりと二人きり話す機会なんてあまりないやろ?」 「え? あ、まぁ、そうなんだけどさ、でも、飽きないって?」  どうやら俺はそれが引っかかっているらしい。 「そんなん、望とは色々と話せるって事やろ? 深い意味なんてないんやからなぁ」 「あ、そっか」 「普通に普通にって事なんやからな。 こういう風に普通に二人きりで話すって事がなくなって来てたやろ?」 「あ、ああ、まぁ、確かにそうだよな」 「そういう意味やって」 「あ、ああ」  確かに雄介の言う通り、島での暮らしは裕実や和也が居て、こうして二人だけで話す時間というのは寝る前の時間しか今は無くなってしまったようにも思える。 それでもこう真面目に話すというのか、ゆっくり話す時間さえも今までなかったように思える。 寝る前というのは本当に寝る前なのだから、どちらかが寝落ちしてしまえば、そこで話は終わってしまうのだから。 「ホンマ、こうやって、久しぶりに望とゆっくり出来ているような気がすんな。 あ、デート……」  最後の方はボソッと言ったつもりの雄介だったのだが、俺の耳にはしっかりと聞こえてしまっていた。  デートか……。  しかしその言葉を聞いたのも何年振りなんだろう?  俺と雄介で初めてデートした時というのは、デパート火災に遭ってしまい、それからはデートっていう言葉を無意識のうちに使わなくなってしまっていたというのか、今まで俺達はその言葉を口にする事はあまりなかった事だ。  俺からしてみたらトラウマになってしまった事だったからなのかもしれない。

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