94 / 645

ー鼓動ー94

 それからの俺達っていうのは適当に注文して食べ終わったら直ぐにお店を出てしまっていた。  あまりにも女性客しかいなくて気まずい雰囲気に会話さえもまともにしてる事さえも出来なくてご飯だけを食べて直ぐに出てきてしまったという感じだ。  店を出て直ぐに、 「流石にあの状況じゃ、ゆっくりなんて出来へんわぁ」 「まぁ、そうだよな」 「まさか、あないに女性客ばっかやと思わへんかったしな」 「俺もだよ。 変に疲れちまった気もするしよ」 「ま、少しは気は使っておったしな」  店を出ると俺は雄介の隣りを歩き始める。 「しっかし、相変わらず、外暑くねぇ?」 「ん、まぁ……東京都心なら、これくらいの暑さっていうのはしゃーないわなぁ。 どうやら、この高いビルとコンクリートで出来た道路がめっちゃ関係しておるみたいやしな。 昼間の暑い太陽がコンクリートを暖めてしまい、夜になってもそのコンクリートっていうのは冷える事がないから今は夜でも東京っていう所は暑いんだってな。 ほら! 島の方っていうのはここと違って緑や土が沢山あるやろ? 土やったら、夜になると冷えてくれるもんやから、島は夜になるとわりと冷えてくるもんやしなぁ」 「あ、そういう事か。 だから、ここでは余計に暑さを感じるって事なんだな」 「そういう事みたいやで」  雄介のはちゃんとした目的地というのがあるのか、目的地に向けて歩いているのかと思ったのだが、 「所で、まだ十四時位なんやけどさ。 もう、雄介が言っていたお店に行くのか?」 「へ? あ、どないしよ?」  その雄介の言葉に俺の方はこけそうになっていた。 「へ? だって、雄介がこっちに歩き出したから、俺はお前に付いて来たっていうだけで」 「ん……確かにこっちの方に歩いて来た訳なんやけどな、まだ、ちょっとばかりその店の方向に向かうのは早いんかな? って思うねんけど……」 「んじゃあ、どうするんだよ」 「せやな?」  と雄介は腕を組んでまで考えてしまっているようだ。  そして急に顔を上げて、 「ほな、今既にデートみたいなのをしてるんだし、東京観光みたいなのしてみないか?」 「東京観光って!? この辺でか? この辺は何もないぞ、基本的にはこの辺っていうのはオフィスが多い所だからな」 「ほな、カラオケとかゲーセンとかは?」 「ん……俺はゲームっていうのはした事が無いしなぁ、なら、カラオケにするか? 俺は行った事ねぇけど」 「せやな? まぁ、涼しむがてらって事でええんと違う? しかもゆっくり出来る所やしな」 「あ、まぁ……そうだな。 別にカラオケに行ったからって歌う必要っていうのはないんだろ?」 「え? あ、無理にとは言わんかな?」 「それだったらいいか」 「ほな、カラオケにしよっ!」  そう決めると俺達はカラオケ屋へと向かうのだ。

ともだちにシェアしよう!