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ー鼓動ー95
しかし本当に都心部のビルというのは高い。 どのビルもどのビルも首を上げて見上げないと見れない程の高さなのだから。
そして本当に東京というのは暑い。
歩いているだけで次から次へと汗が吹き出てしまっているのだから。
そして意識して見ていると本当にこの地には沢山のカラオケ屋が並んでいる。
「……って、雄介、どこにカラオケ屋にするんだよ。 沢山あるみたいなんだけどさ」
「あ、あー、せやね。 別に俺の方はカラオケ屋に指定の場所があるっていう訳じゃないしな」
「んじゃあ、何処でもいいって事なんだろ?」
「そういう事になるわぁ」
「じゃあ、この目の前にあるカラオケ屋でいいんじゃねぇ?」
そう言うと俺は目の前にあるカラオケ屋の前で立ち止まる。
「ほな、ここにしようか?」
そう決めると、俺と雄介はそのカラオケ屋に入って行くのだ。
店に入ると会員証の提示を求められたのだが、俺達がそんな物を持っている訳でもなく、雄介は仕方なく作っていた。 そして部屋へと向かう俺達。
俺的には全くもって人生の中でカラオケ屋という場所には行った事がなく、当然初めて来た場所なのだから辺りをキョロキョロと見渡してしまう。
「わりと狭いんだな」
「まぁ、個室だし、歌えればええ訳やしなぁ、なんやろ? 都会のビルの中にあるカラオケ屋だから狭いのはしゃーないって所なんかな?」
そう言いながら雄介は知ったようにソファへと腰を下ろすのだ。
「それでも暗くねぇ?」
「暗いのか? っていうのは分からへんけど、まぁ、多少位やったら明るくする事は出来んで」
そう言って雄介は照明を明るくしてくれたようだ。
「あ、そこにあったのか?」
照明の調節するボタンはどうやらドアの近くにあったらしい。
「まぁ、カラオケっちゅうもんは、部屋の中っていうのは何処もかしこも似たような所なんやって。 で、望は何か歌うんか?」
「ん? 俺は歌わないかな? だってさ、最近の曲も昔の歌も全く俺は知らねぇしさ」
「ほな、俺が歌うっていうだけでええか?」
「え? あ、雄介は歌えるんだったら歌ってもいいけど……ってか、今まで雄介が歌う姿とか歌ってるとことか聞いた事も見た事もねぇんだけ、だから、聞いてみたいっていうのはあるんだけどさ」
「ほな、少しだけな。 だって、望は歌わないんやったら、望がつまらなくなってまうやろ?」
「それはどうなんだろ? 雄介が上手かったら、ずっと聞いてられるんじゃねぇのかな?」
「……へ? そうなのかもしれへんけど……流石に二時間も三時間も歌ってもうたら声が出なくなってまうわぁ」
「あ、流石にそうだよな」
「それに、俺はちょっと歌えればええわけやしな」
「なら、ここに来た意味がねぇじゃんか」
その俺の言葉に雄介は困ったような表情をしていた。
「ん……まぁ、ええわぁ……とりあえず、少し俺が歌ってから考えよ」
そう言うと雄介はリモコンを取るのだ。
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