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ー鼓動ー100

「ん、まぁ……そうなんやけど。 望とそいつへの本気度っていうのが違うっていうのか」 「ま、それは分かるっていうのかな? それは、確かにそうなのかもしれねぇけど、なんていうのかな? 雄介は俺の事を本気で好きなのは分かってるんだけど、別に俺はその雄介の前の相手に対して嫉妬とかっていうのはしないと思うし、だから、そいつの事を悪くいうのはちょっとなっていう感じかな?」 「あ、スマン。 今の俺はホンマに望しか見えておらんかったみたいやわぁ。 せやね、望の言う通りなのかもしれへん。 今、何で、そいつの事、そういう風に言ったんか? っていうのは分からへんけど、多分、望にそいつの事を話したら嫉妬するんじゃないかと思うたからなのかもしれへんな」 「ん、まぁ……そういう事だからさ。 そいつの事、悪く言う必要なんてねぇんだからな」 「あ、え? うん……そうやんな」  そして雄介は少しそいつの事を思い出しているのか気持ち的に遠い目をしていた。  とりあえず、さっきのパスタ店ではゆっくり出来なかった俺達だったのだが、今はこうしてゆっくりと出来たような気がする。  そうカラオケの曲をBGM代わりにして……こうやって今日は雄介とゆっくり話が出来たような気がするからだ。  こんな事だってホント何年振りなんだろうか?  でも今は雄介が思い出に浸っているのだから、静かになってしまった空間にはカラオケのチャンネルが流れているだけだ。  俺達の今までの人生……こんなにもゆっくりとした時間なんてあったんだろうか?  普通の人達が電車で言うのなら各駅停車なのかもしれないのだけど俺達の人生っていうのは特急電車だったのかもしれない。 でも今は久しぶりに各駅停車の状態でいるような気がする。  のんびりとした空間。  こんな時間というのは本当に初めてだった。  何も考えずにただ自分達がしたいようにする時間。  俺なんかは特に小学校からそんな気がして来た。 毎日のように時の流れというのが特急電車だったって事だ。  小学校の時にはもう既に私立の学校に行っていた俺。  そういつか流行っていたお受験戦争の中に俺は居たのだ。  小学校に上がってからだって、私立の学校に居たというのもあるのだけど、やっぱ家系の関係で既に一年生の時、あ、いや……保育園の頃からの夢というのが『医者』だった。 そして小学生になってからというもの、俺の毎日というのは勉強漬けだったのだから。 もしかしたら保育園の頃から毎日のように勉強していたのかもしれない。 「あー!」  と急に大声を上げる俺。  その声に隣りに座っていた雄介は目を丸くしながら俺の事を見上げていた。 「急にどないしたん?」 「あ、いやな……雄介がその思い出に浸っている間に思い出した事があってさ。 俺の方も考え事してたんだけど……記憶の方が大分戻って来てるみたいなんだよな」 「へ? そうなん!?」 「だってさ、今、俺が思い出してたのは、その保育園の時から小学校の時の思い出だったしな」 「へ? あ、ん?」  と今の俺の言葉だけでは、どうやら雄介には伝わってないようだ。 「だからさ、俺は記憶喪失になってしまって、今までは自分の昔の記憶っていうのは消えてた訳だったんだろ? だけど、今、こうゆっくりとした空間の中で、自分の過去を振り返ってた訳なんだよ。 そしたら、思い出したっていうのか……俺は小学校の時から既に私立の学校に行っていたっていう事を思い出したんだ。 しかも、保育園の頃からの夢っていうのが、『医者』っていう事もな……」 「そうやったん? そりゃ、良かったんじゃないんか?」  そう雄介は俺の事を見上げながら微笑んでくれたいた。

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