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ー鼓動ー162

 すると雄介の心臓の辺りからは鼓動が聴こえてくる。 しかも終わった後なのだから鼓動の音は早い。  それに俺は安心したような笑みを浮かべていた。  少し落ち着くと雄介は顔だけを上げてきて、 「大丈夫か?」  と俺の心配してきてくれる。 俺も雄介の方に顔を上げて、 「お前の方こそ大丈夫なのか?」  そう聞くと雄介はとぼけたような表情をしていた。 「確かにこういう事をやったのだから、疲れたりしてるのだろうけど……お前忘れてねぇ? 今回、東京に来たのはさ、検査するために来たんだからな」 「まぁ、そうやねんけど……」  そう言うと雄介はベッドの上に頭を乗せる。 「あ、いやなぁ、俺の方はホンマに平気なんやって……確かになあん時、海の中を彷徨ってたのは確かなんやけど、陸に上がる事は出来ておったし、なんもないで……」 「まぁ、あれから三日は経っているんだから平気だとは思うんだけどさ。 でも、検査しないで数年後に何か出てきても困るだろ? それだったら今のうちに検査しといて何も無ければそこで安心出来る訳だしさ」 「まぁ、確かにそうやねんな。 分かっとるって」  そう言うと雄介は俺の頭を撫でてくる。  くすぐったいような、恥ずかしいような気持ちになるのは気のせいであろうか。  こんな事、親子でならありそうなのだけど、恋人でも……あ! あるのかな?  親子と恋人って関係というのか扱い方っていうのか似てるような気がする。  親は子を守ったり、手を繋いだり、ギュって体を抱きしめたりしてくれるもんだ。 恋人だって同じ事をする。  俺は親に今までそんな事をされた記憶というのはそんなになかったのかもしれないけど、雄介は普通にそんな事をしてくれる。  やっぱり親子と恋人との関係とは似てるのかもしれない。  俺はクスリとすると、 「雄介……ありがとうな……」 「はい!? 突然、どないしたん? 俺、望にお礼されるような事したんか?」 「ぅんん……そういう事じゃなくてさ……俺って小さい頃から親がいなかっただろ? だからさ寂しい思いとかして素直になれなかったのかもしれないんだけど、雄介と出会って、やっと寂しい思いをしなくなったっていうのか素直になれたっていうのか、そんな風になれたからさ。 雄介に出会えて良かったと思ってる……だから、ありがとうなのかな?」

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