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ー鼓動ー176

「何……笑ってるん?」 「ん? 雄介のそういうとこって可愛いなぁーって思ってさ……」  そう言うと今度雄介は顔を赤くしていた。  雄介のこういう表情ってそう滅多に見られる訳ではない。  寧ろ俺の方がそういう表情ばっかしてるんだから、たまには俺が雄介の事を押してもいいだろ?  こんな事いつぐらい振りなんだろ?  いや俺が元から素直じゃなかったからこんな風にはなってなかったからな。 素直になると雄介のこういう表情だって見れるって事なんだろう。 「ま、まぁ……ええからご飯食べて」  と誤魔化すように言う雄介。 「ま、そうだな」  だけど俺はそれ以上は突っ込まない。  それでは和也と一緒になってしまうからだ。  和也なら今のこの状況だったら、きっと色々と突っ込むだろう。  だけど俺にはそんな所までは突っ込まないというのか、この幸せな時を喧嘩なんかして壊したくないからっていうのもある。  そして俺達はご飯を食べ終えると食器をキッチンの流し台へと置きソファへと向かう。  今日の夜は昨日とは違い雄介とゆっくり過ごしたいと思っていたから、それでいいのかもしれない。  今だって俺は雄介の隣に座っている。  これが昔だったら隣にではなくてソファを一個分位空けて座っていただろう。 「少し番組でも見て……ゆっくりしてから風呂に入ろうか?」 「え? あ、そうだなぁ」  そう言う雄介に俺は素直に頷く。  ホント雄介に対しては大分素直になってきた気がする。  今のテレビの時間はゴールデンタイムと言われる時間だった。  島で見てる時のようにクイズ番組にしている。  たまに二人で答えていて大笑いしてみたり、雄介が間違えて頭を抱えていたり島にいる時と同じ事をして時間を過ごしていた。  そして頃合いを見計らって、 「ほな、俺は風呂溜めてくるな」  と言って雄介はお風呂の用意へと向かうのだ。

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