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ー鼓動ー181
「ま、気にすんなや……俺は昨日ので満足しとるし、ここは今回は寝るだけの部屋やしな」
「え? あ、そうだよな」
そう一応俺はそう返事しておく。 そしてベッドまで雄介と一緒に向かうと、
「もう、この部屋はある意味、目の毒やし、電気は消そうか?」
「え? あ、そうだな……」
そう言うと雄介は本当に電気を消してしまう。
そしてベッドの上に横になると、二人共天井を見上げているだけだった。 だからなのか部屋の中は静かで妙な空気が流れているような気がする。
とそんな雄介に俺は、
「……って、何で何も話さねぇんだよ」
「ん? なんやろ? 俺が何か言ってしまうと、そういう事しか出てこないような気がしてな」
「そういう事って?」
「あー、さっきみたいなこと」
そう端切れが悪そうに言っている雄介。
「さっきみたいな事って?」
「キスしたいとか……?」
ってそこは何で疑問形なのかって言いたい所だけど、そこは黙っておく事にした。
「キスしたければすればいいんじゃねぇのか?」
「んー……そうなんやけどなぁ。 雰囲気とかってあるやんか」
「でも、さっきは俺にそう言ってただろ?」
「そうなんやけど……」
まだ何か雄介にはあるのであろうか? 今度は俺がいいと言っているのにキスをしてこようとしない雄介。
「……また、失敗やな」
そう雄介は再びボソリと言う。
その言葉に、
「だから、したければすればいいだろ!」
と俺は雄介の方に体を向けてそう言い放ってしまっていた。
要は半分投げやりな言い方だったのかもしれない。
そう言うと雄介も俺の方を向いたような気がした。
この部屋は真っ暗過ぎて未だに目が慣れていないのと俺が目が悪いのとで雄介の事はよくは見えていない。 だけど気配で雄介が俺の方を向いたような気がしたからだ。
そして雄介の腕が背中に回される。
何故かその雄介の行動に胸がドキリとしたような気がした。
思わず目を閉じてしまう俺。
だけどキスをされたのは唇ではなく額にだ。
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