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ー至福ー13
ホント、今でもまだ雄介っていうのは俺の心をドキドキとさせてくれる。 これがときめきっていうのかもしれない。 俺の方はそんな事、雄介以外の恋人ではなかったように思える。 って言っても大学時代に合コンで出会った彼女以外は付き合った事はなかった。 二人共幸せに感じれるっていう事が恋人なんだろう。 大学の時にいた彼女っていうのは恋人っていうよりはヒモと言われている存在だったのかもしれない。
そうまた俺が考え事をしていたら、また誰かに呼ばれたような気がした。
「……ぞむー! 望っ! ご飯出来たぞー!」
「……へ? あ、ああ」
さっき俺の事を呼んだのは雄介だったのだけど、今俺の事を呼んだのは、どうやら和也だったらしい。
その声に少し目をパチクリとさせながらソファから立ち上がる俺。
「……って、何を考えてたんだ? なんかボッーとしていたみたいだけどな」
そう和也はソファを乗り出す勢いで俺に聞いて来る。
だけど俺は和也の事があんまり嫌いではないのだけど、どうしても和也にはそういう事あんまり話したくないからなのかツンっていう態度を取ってしまうのだ。
「別に……何も考えてなんかねぇよ……って、それよか飯なんだろ?」
そう言いながら、俺はみんなで食事を囲むリビングテーブルの方へと向かうのだ。 さっきまで俺の隣で一緒にテレビを見ていた雄介は和也に呼ばれて先に来にていたのであろう。 もう既にリビングテーブルに座っていたのだから。
俺もいつものように雄介の隣りに座る。 すると和也の方も戻って来てリビングテーブルへと座るのだった。
「チェッ! なんだよー、もさぁ、ホント、望は俺には何も話してくれないのなぁ」
そう和也は口をとんがらせながらふざけたように言うのだ。
って事は別に今の俺の行動を気にしてないっていう事なんだろう。
ま、そこは和也らしい所なのかもしれない。
そう和也というのは聞いて来た事に関して別に大した事が無い時には昔からそう深くは追及して来ない。 ただ本当に俺が深刻そうな時だけ追及しに来るという感じだ。 それで昔はよく和也と揉めていたというのか喧嘩していたというのか何か言い合っていた。 でもよく考えてみると追及されて相談に乗ってくれて最終的には色々と解決して来たんだよなぁ。 そういうとこ和也っていう人間は凄い所なんだと思う。
そしてテーブルをみんなで囲んで、いつものように、
「いただきます」
本当に何も言わなくてももう俺達というのは声が揃うって言っても過言ではない。
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