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ー至福ー12
「確かに年も歳だけど、まぁ、俺達の場合、ちょっと同性婚について認めてもらえるのが遅かったのかもな。 もう後十年位前に認められていたら、直ぐにでも結婚していたのかもしれねぇけどよ。 まぁ、そこは若いからあまり考えずにっていうのもあったのかもしれねぇけどな。 後はあの頃っていうのは都心の方に住んでたから、逆に周りが気になんなかったのかもな。 だってよ、ここは島で人口が少ない地域だから色々な噂っていうのは直ぐに回ってしまうんだろうけど、これが、都心の方だったら隣近所っていうのは全くもって関心っていうのは無いもんなんだから役所に行って婚姻届を出したって他人の事なんか気にしないんだから、あんまり周りに気付かれる事無く結婚出来たんだろうけどな」
……確かにそうだ。 本当にそこは和也の言う通りなのかもしれない。 それに『木を隠すなら森の中』って言葉の通りに、都心部で結婚するなら、同性婚を待ち望んでいた人達が沢山いるのだから同じ仲間の人がいるんだし何かこう安心感みたいなのは沢山あるのかもしれない。
そう考えると今の俺達っていうのは島に来てしまって失敗したように思える。
俺だって本当に雄介と結婚はしたい。 だけどやっぱり問題みたいなのは沢山ある。 確かに和也の言う通りまだ都心部に居れば良かったとさえ思える。 それと雄介の言う通りそろそろ俺達の歳というのもヤバいような気もするからだ。 結婚は出来たとしよう。 だけど子供を作るというのか俺達の場合のは男同士なのだから、そもそも子供を作る事は出来ないが、今は養子制度があるから、養子で子供を育てようと思っても、その養子の子供が二十歳になる頃には俺達の歳というのは六十歳近くなってしまうという事だ。 それだと子供が可哀想な気もする。 ホント、もう少し早く同性婚を認めて欲しかったとさえ思う程だ。
「ほんなら、また都心部の方に戻るか?」
「それは、何か違うような気がするんだよなぁ? だってよ、やっと俺達はこの島に馴染んで来たっていうのか、島の人達に受け入れて貰った所なんだぜ。 それで自分達の勝手な理由だけで、もうこの島での暮らしを諦めちゃうのか?」
本当に和也っていうのは自分の事より他人の事を大事に思っているっていう事なんだろう。 そうじゃなきゃこんな言葉なんて出て来ないのだから。 確かに俺達っていうのはこの島に来てまだ二ヶ月位しか経ってないのかもしれない。 それで自分達の夢の為に島を出てしまうののは勝手な事だと思うからだ。
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