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ー至福ー16

「よっ! 久しぶりやんな!」  と雄介の方はこう片手まで挙げて気軽に朔望へと話掛けるのだ。 『あのさぁ、いきなり掛けて来るのはいいんだけど……』  そこまで朔望は言って何でかそこで言葉を止めてしまっていた。 別に俺の方は聞く気とかっていうのは全くなかったのだけど、雄介達がスマホをテーブルの上に置いて話しているもんだからチラっとスマホが視界へと入って来てしまったからだ。  そして朔望が言葉を止めた理由が分かったような気がする。 何だか背後からというのかスピーカーからはこう水音と皮膚と皮膚が打つかる音が聞こえて来る。  その音に俺等全員が気付かない訳がないだろう。 俺なんかはその音を聞いた瞬間には顔を真っ赤にしてしまった位なのだから。 「なーんや、朔望と歩夢はお楽しみの最中やったって訳か……」 『ま、そういう事……で、用事って何? 電話掛けて来たって事は何か僕達に聞いてみたい事があるって事でしょう?』 「ま、そういう事やねんけどなぁ。 って、最中に話出来るもんなんか? ってか考える事出来るもんなんか?」 『え? そういうもんなの? でも、出来るんじゃないの? だって実際、今そうなんだからさ』 「え? あ、まぁ……そうやねんけどな」  流石の雄介も朔望と歩夢がヤりながらという事に戸惑いを見せているようにも思える。 そう雄介はスマホから視線を逸らしながら頭を掻いてしまっているのだから。 「ほんならなぁ、朔望達は今日から同性同士で結婚出来るようになったって事知っておるか?」 『まぁ、テレビではまだ見てないけど、ネットのニュースでは見たって言ったらいいかな?』 「あ、そっか……今の時代っていうのはスマホでニュースっていうのは入って来るからな」 『ま、そういう事ー!』 「ほなら、朔望達はそのニュースの事どう思ってるん?」 『え? あー、そうだねぇ。 僕達の場合には兄弟だから流石にそこは無理なんじゃないかな? って思ってるんだけど』 「あー、まずは、そこやったなぁ?」 『え? でも、雄兄さん達はそうするつもりなの?』  と朔望が聞いて来る間にも向こうからは皮膚と皮膚が打つかる音と歩夢の色っぽい声と水音とが聞こえて来てしまっている。 しかしテレビ電話にしているのだけど、アイツ等の画像が入って来ないのはスマホを天井へと向けているからなのであろう。 そこには何でかホッとする俺。 流石に他人のそういうのは見たくはないもんだ。   しかし本当に声だけでも聴覚を通じてじわじわと体にキているような気がするのは気のせいであろうか。

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