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ー至福ー52

「はぁ!? 俺がそないな事する訳ないやんか……」  雄介の方は落ち着いたと同時にそう言葉を発するのだ。  だけど逆に言えば、雄介以外は今の雄介の行動でバレバレっていう所だろう。 視線だって完全に逸らしてしまっていたのだから。  って、事は今の雄介というのは俺等に隠し事をしているっていう事だ。 さて和也の事だから何か他にも考えているのであろう。 それに雄介からしてみたら、こっから逃げる術というのは無いのだから。 雄介と和也の攻防でも聞きましょうか。 「……ホント、お前って分かりやすい奴なんだな」  そう呆れたような言い方で責める和也。 「そ、そんな事はないって……それになぁ、望にホンマ隠し事なんかないって……」 「本当にソレ言い切れるのか?」 「そこはホンマやって……」  そう言い切る所を見ると、どうやらそこは本気らしい。 じゃあ、何で今さっき雄介は食べ物を咽せるような行動をしたのであろうか。 そこは疑問に残る所だ。 「じゃ、何で、望とか俺等には自分の事を話ししてくれないんだ? まぁ、俺等の方は別にいいんだけど……望には話してもいい事っていうのは沢山あるんじゃねぇのかな? それにさ、結婚する前に隠し事とかって嫌じゃん……だから、望だって雄介との結婚を決意してくれねぇんじゃねぇのか?」  ……あ。  俺が雄介に言いたい事を完全に和也が言ってくれている。 って事は和也もそう思っているっていう事なのか。 いや和也の場合には違うのかもしれない。 ただ単にこの前、話してくれた通りで今すぐに結婚するのはこの島では難しいからであろう。 だけど何で和也は俺が雄介に思っている事が分かったんだろうか。 ホント、そういう所、和也っていう人間は敏感なんだと思う。 「いや……別に……そこは……まぁ、何て言うんか? なんや自慢みたいな感じになってまうし、人間、自慢話してくるような奴っていうのは嫌われてまうやろ? せやから、自分の事はあんま話さないようにしてるだけなんやって……」  こう視線を天井の方に向けて考えるように話している所を見ると少し嘘みたいなのを混じって話しているのか、恥ずかしいから視線を逸らして話しているのか今の所は分からない所だ。 「雄介って、ホント、そういう所あるよなぁ。 ある意味、俺達の事を信じてないっていうのかな? 昔さぁ、よく望とその事でぶつかり合った事があったけど、要は雄介もそうだっていう事だろう? 俺達の事を信じてないから自分の事を話してくれないんじゃねぇのか? 信じてくれていたら、俺達がそんな事で嫌うような奴ではないって事位分かってくれてるだろ?」

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