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ー至福ー53

 雄介は天井の方に視線を向けた後、急に和也の方に視線を向けると、 「……ほんなら、何を俺に聞きたいん?」  雄介はさっきの和也の言葉で意を決したのか、それとも和也の説得が効いたのか? っていうのは分からないんだけど、どうやら俺達に話してくれる気になってくれたようだ。 「ならなぁ……?」  ん? 今度は和也の方が天井の方へと視線を向けて考えてしまっているようだ。 ……へ? あ? と俺の方がその和也の行動に目を丸くする。 だって、そこまで雄介の事を説得しといて、まさか雄介に質問する言葉が無いってどういう事だ!? っていう状態だからだ。 そこまで来たんだったら、ちゃんと雄介にする質問まで考えておいて欲しいもんだ。 やっぱり和也ってたまに何処か抜けている時があるような気がする。 特に今日は診療所が休みというのか仕事が休みだからちょっと抜けているのかもしれない。  和也が雄介に質問するまでの間、時が止まったかのように辺りは静かになって波音と時計の秒針が動く音しか聞こえて来ない。  とそんな静かな空間に電子音が鳴り響く。  本当に久しぶりに聞く電子音に四人は一斉にその鳴った電子音の方へと視線を向けると、鳴っていたのは雄介のスマホだった。 「……へ? 姉貴から?」  そう雄介の言う通り、朝から雄介のスマホを鳴らしたのは雄介の姉である美里さんからだ。  雄介は通話ボタンを押すと姉と話始める。 「……へ? 何? どうしたん?」 『吉良先生に代わってくれる?』 「はぁ? 急に何で望なん?」 『いいから、いいから……吉良先生に言いたい事があるからよ』 「……へ? あ、ああ」  雄介はそう言うと、スマホを俺へと渡して来る。 「姉貴から望に話があるんやって」 「……へ? 俺に!?」  ……しかし、何でだろう? 雄介のお姉さんが雄介にがあるんだったら分かるんだけど……何で、俺に何だ? 何だか未だに分からないのだけど、雄介のお姉さんが俺に用事があるんだったら出るしかねぇか。  とそう俺は覚悟を決めると雄介のスマホを耳へと当てるのだ。 「代わりましたけど……」 『あ! 吉良先生……! いつも雄介がお世話になっております』 「いえいえ……」  最初は何も変わらず世間話を始めて来る美里さん。  その間に雄介や和也達は食べ終えた食器を流し台の方へと運んでいた。 雄介は俺のも運んでくれていたのである。 『ねぇ! 吉良先生……今度、同性同士でも結婚が出来る様になったんですってね!』  ……あ、そうだった。 寧ろ、その事については今みんなで話合ってる事でもあるし、ニュースでもやっていたのだから美里さんが知っていてもおかしくはないだろう。 『……で、吉良先生は雄介と結婚するつもりあるの!?」

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