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ー至福ー72

「話の骨折ってスマンなぁ。 あー、痕付けるんやったっけ? ほな、俺も望にしたいんやけどなぁ?」  そう俺の事を伺うように聞いて来る雄介。 そんな雄介に、たまにはというのか、俺達がこういう行為をやり始めて、逆にそんな事初めてなのかもしれない。  そういう事、無意識に拒否してきていたのであろう。  俺達の仕事というのは、人の命を救う仕事だ。 雄介なんかは消防士で仕事場で制服に着替えたりするんだろうから、同僚とかに、そんな痕なんか見せられる訳もなく、俺の方だって、そんな痕があったら和也に冷やかされるに決まっているのだから、お互いにその行為に関しては全くもって意識的にして来なかった事だ。  俺はトロンとしたような表情で雄介の事を見上げる。 「もう、色々な意味でいいんじゃねぇのか? お互い結婚するつもりなんだし、周りを気にする事も無いんだしな」 「あ……」  今の俺の言葉で雄介の方も何かに気付いてくれたようだ。  そう俺だって一瞬でそう思ったんだから、雄介の方も今まで無意識のうちに痕を付けてなかった事と周りとか気にして、今までそんな事をして来なかった事を思い出したのであろう。 「雄介もきっと無意識のうちに、俺にそんな事をして来なかったんじゃねぇのか? ならさ、もう俺達っていうのは結婚するような仲なんだし、寧ろ、見せ付けてもいいんじゃねぇのかな?」  俺からしてみたらいつも以上に挑発的な言葉に、気持ち的に動揺しているような雄介。 そして少し考えた後に、悪戯っ子のような表情を浮かべ、 「せやなぁ……」  といつもの雄介に戻ったようだ。 「ほな、痕の付け方やったよな?」  雄介は俺に向かって、そう言うと俺の事を膝の上に乗せて体を抱き締めると頭を肩ら辺に近付け、皮膚を吸って来る。 「ふぅ……んん……」  思わず俺の口から、そんな甘いような声が漏れてしまっていた。  だが、なかなか俺から離れてくれない雄介。  そう吸い上げる音が俺の視覚を刺激する。 そして離れて行った直後、そこの皮膚はスースーとしていた。  流石に赤い痕を俺がマジマジと見れる訳もなく、軽く息を吐くだけに止める。 「こんな感じに付けたらええねんけど……」  そう説明してくる雄介なのだけど、俺は目を開けられずにいた。  そんな俺に気付いたのか、 「ま、ええか……」  と仕方なさそうに小さな声で漏らし、 「とりあえず、望の方はやってみるか? 今での分かったやろ? 皮膚を吸い上げる感じにやったら、ええねんやって……」

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