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ー至福ー73

「え? あ、ああ……」  雄介にそう言われて、俺の鼓動が急に早くなる。 きっと急にそんな事になって緊張してしまったという事だろう。  だけど今日は『やる!』と言い出したんだから、俺の方は早くなってしまった鼓動に気持ち耳を傾けながら、唇を雄介同様に肩ら辺へと近付ける。  それと同時に聴こえて来たのは、雄介の鼓動の音だ。  ドクドクドクドクと唇にも伝わって来そうな位の早い鼓動だ。  俺は唇が雄介の皮膚に付くかつかないかの所で、 「お前も緊張してるのか?」  と聞いてみた。 「へ? え? あー……そやなぁ? 緊張っていうよりは、こういう行為をしとるから体が興奮状態になってるの方が正しいんと違う(ちゃ)かなぁ?」 「あ……」  確かにそういう事なのかもしれない。 俺の方はまだ興奮状態というより緊張の方が上回っているから、『緊張している』となるのかもしれないけど、雄介の場合には『興奮している』の方が上なんだろう。 寧ろそう普通に答えていたのだから。  ま、とりあえず俺は、その事については置いておいて、さっき雄介に言われた通りに雄介の皮膚に唇を触れてみると吸い上げてみる。  たった数秒吸い上げ顔を上げる俺。  その瞬間、雄介とどうやら視線が合ってしまったようだ。 「これで、痕付けられたか?」  そして今唇を寄せた雄介の皮膚へと視線を向けるのだ。  だが唇を寄せたと思われる皮膚には何もないようにも思える。  だから俺の方は首を傾げてしまっていた。  そんな俺に雄介は気付いたのか、 「もうちちょい強く長く吸わへんと、痕にはならへんよ……」 「へ? あ、ああ……そうだったのか……」  そう俺は雄介にアドバイスを貰って再度、雄介の皮膚へと唇を寄せ吸い上げてみるのだ。  今度はさっきよりも長く強く雄介の事を好きだと思いながら吸い上げ満足そうに顔を上げると、今度は見事にそこには赤い痕が付くのだった。  俺は心の中で思わずガッツポーズしてしまっていた。 きっと雄介は俺のもんだっていうのが見えるように出来たからなのかもしれない。 「出来たのか?」  俺の今の表情っていうのは、きっと心の中に思っていた事が顔に出てしまっていたのであろう。 だから雄介の方も笑顔になってそう言って来てくれたのだから。 「とりあえず、どないする? 望はもう少し俺にこの後付けたいんか?」 「え? あー……」  そう言われてみると、なんか一個で満足してしまっているのかもしれない。 「あー……俺の方はもういいかな?」 「その言い方だと分からへんねんけど……?」

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