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ー至福ー107
「やっぱ、そういう事って、毎日のように一緒にいた望の方が気付くんじゃないかと思うんだけど……?」
そう言うと、使っていたコンロのガスを止めるのだ。 きっと和也の中で料理が出来たのであろう。
「……って、和也ー、俺の話を真面目に聞いてるのか?」
「聞いてますけどー……」
そう言う和也は手をヒラヒラとさせ何だか真剣に俺の話を聞いてくれていないような気がする。
そこへ裕実が洗濯物を抱えリビングを通って窓の方へと向かっていたのだが、朝から珍しく俺と和也が話をしていた事に気付いたのであろうか、俺と和也の事を交互に見上げた後で、
「珍しいですよねぇ、朝から、和也と望さんが一緒にいて会話しているなんて……」
裕実は不思議そうな表情をしながら、俺達の事を見上げて来たのだけど、俺も裕実の方へと不思議そうな表情を向けるのだ。
それに気付いた裕実は、
「え? ぼ、僕の事ですか?! え? 何かありましたっけ? た、確かに昨日は僕と和也とは結婚の事についてちゃんと話し合いをしましたけど、僕からしてみたら、望さん達に話すような事はなかったかと思いますけど……」
何だか裕実の方は急に慌てたような様子で、恥ずかしいような、きっと昨日の和也との話し合いを思い出しているのか、動揺しまくっていて言葉を上手く発せてないような気がする。
「あ、ああ! ちょ、ゴメン……実はその話じゃなくてさ……確かに、その話も重要なのかもしれねぇけど……あ、いや、重要なんだけどさ、ちょっとな、何だか、俺からしてみたら最近雄介の様子がおかしいっていうのかな?」
「……え!? そうだったんですか? 雄介さん、何か様子がおかしかったんでしたっけ?」
そう裕実の方は和也と違って、真剣に俺の話に付いて来てくれようとしているのか、天井に視線を向けてまで考えてくれているようだ。
でも、そう考えると、雄介の様子が最近おかしいと思っているのは俺だけなのかもしれない。
だから俺は訴えるように、
「だからさ、今だって起きて来ないのがおかしいだろ? 前だったら、俺より早く起きてご飯作ったりしてくれてたしな」
「それは、当番制にしたからなんじゃないんでしょうか?」
「ま、確かに、それはあるのかもしれねぇけど……ってか、それ、さっき和也にも言われたんだけど……だけど! 違うんだって! 少なくとも雄介は俺より早く起きてる事が多かったんだけどな」
その俺の言葉に、和也も裕実も唸ったように考えてくれているようだ。
「現に今だって、起きて来てないだろ?」
「でも、死んでるっていう訳じゃねぇんだろ?」
「ああ、まぁな……それは、毎朝のようにっていうのか、温もりは感じてるからな」
「クス……温もりな」
何だか、その和也の言い方だと、意味がありそうな言い方だ。
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