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ー至福ー116
「だからやなぁ……姉貴に本気でお願いする為にやって。 確かにな、電話とかメールとかでお願いするのは簡単な事やけど、それじゃあ、本気度っていうのが伝わらないもんやんかぁ……。 俺の方は本気で姉貴に代理出産を頼みたいと思うてんねんから、相手の目を見てしっかりと頼みたいねんて」
その雄介の言葉で俺の方は目を丸くする。 俺がその事について提案してから、まだそんなに時間は経ってはいない。 それなのに雄介の方はそこまで考えていたという事なのだから。
「そういう事か……。 今ので十分にお前の本気度っていうのが分かった。 そうだよな、確かに雄介の言う通り、本気で頼みたいんなら、面と向かって言わないといけないもんだもんな。 とりあえず、それは結婚してからというのか、婚姻届を出してからの話になるのかな?」
これで、子供の方は本当に雄介とは真剣に話が出来たような気がする。
だが、俺達の中で問題はそれだけではない。 先ずは婚姻届を先に役所に行って提出をしなければいけないのだから。
「そやなぁ……確かに、婚姻届を出すのが先やったなぁ……。 先ずは結婚しないとなんやしな。 ほな、思い切って出すか?」
「あのなぁ、子供の事は本気で考えてくれてたのに、婚姻届の方は適当なのかよー」
本当に今の雄介の言葉からは婚姻届については本気度が伝わって来なかったようにも思える。 だから俺の方は若干プチンと来ていたのだから。
「ほな、どうすんねん……」
「だから、今からそれを考えようとしてるんだろ? 寧ろ、そこの所は考えてねぇのかよー。 そこの所はマジに真剣なんだぞ。 マジで真剣に考えてくれよなぁ」
「そっかぁ……そやなぁ……?」
と本当に今の雄介はさっきとは違い本気で考えてくれてないようにも思える。
そこに俺の方は呆れたようなため息を吐きながら、両肘をテーブルへと付けてまで考え始める。
だがその数分後だっただろうか、
「ちょ、たんま……」
「へ?」
「スマン……また、頭が痛くなって来たわぁ……」
「へ? また、なのか?」
その雄介の頭が痛い発言に、目をパチクリとさせてしまっている俺。
さっきまで雄介の事を見上げていても普通の顔色だったのに、もう既に顔色が悪いように見える。
「ちょ、待ってろ……」
そう言って、俺はリビングテーブルから立ち上がると、薬箱から頭痛薬を探し持ってくるのだ。
しかし頭痛になる頻度が高いような気がする。 ついこの間にも頭痛になっていた雄介。
その騒ぎに和也達も気付いたのであろう。
「どうしたんだ?」
とリビングテーブルの方へと集まって来ていたのだから。
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