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ー至福ー123

 その雄介の言葉に何でか時が止まったかのような間があったような気がする。  この(かん)、俺の鼓動も雄介の鼓動も今まで以上に早く動き、雄介も俺もそれぞれに隣にまで聞こえてしまうんではないかと思う位だったのかもしれない。 『……分かったわぁ。 もう、雄ちゃんと吉良先生はキチンとそこまで話をしているっていう事なのね……。 で、これから、どうするつもりなの? 雄ちゃん達が春坂に来るんだったら、診療所の方はどうするの? それだって、吉良先生のお父様が考えて、雄ちゃん達は診療所で働かせて貰ってるんじゃないのかしら? 確かに、雄ちゃん達が春坂に来るのは分かるわよ。 だけど、診療所を放っておいてまで雄ちゃん達の願いを叶える為にこっちに来るのはどうかと思うわよ。 それに、吉良先生のお父様にも悪いしね……』  確かに、美里の言う通りだろう。 雄介の中では完璧にそこまで考えていたのだから、 「そこは、望の弟達に頼もうと思うとるから……。 先ずは姉貴に頼んで、代理出産してもいいって了承を得る事が出来たら、今度は望の弟達に頼むって決めておったんやからな。 望の弟は、一人は小児科医やし、もう一人は心臓外科医やし、一回この島の診療所頼んだ事あったし、大丈夫やと思うしな」  雄介の方は、またそう真剣に美里に告げるのだ。 『……そうなの。 それで、その間っていうのは、雄ちゃん達は春坂病院で働くっていう事なのね?』 「そういう事なんやって……」 『じゃあ、もし、その吉良先生の弟さん達から了承を得られなかったらどうするの? そこも、とりあえず、了承を得て貰えないとじゃない?』 「確かに、そうなんやけどな。 やけど、俺はそういう事に関して先に姉貴に了承を得たかったから……だから、先に姉貴に電話したんやで……ほんで、ちゃんと決めたら、改めて、姉貴の所に行って、お願いしようと思うとったしな。 せやから、もし、望の弟達からも了承を得る事が出来たら、俺達が春坂に行った際には、俺達の代理出産お願いします!」  そう言って再び頭を下げる雄介。  だからなのか、俺の方も雄介同様に頭を下げるのだ。 『分かったわぁ……そこは、私の方もしっかりと考えておくわよ。 流石にちょっと私の方も歳だしね。 貴方達の場合、お医者さんなのだから分かると思うのだけど、高齢出産っていうのは、私にも赤ちゃんにも負担やリスクが伴うもんなのだからね。 もし、赤ちゃんが出来て死産してしまった場合、吉良先生にも悪いし、勿論、雄ちゃんにも悪いしね』 「あ……」  俺と雄介はその美里の言葉を聞いて、思わず声を上げてしまい再び視線を合わせるのだ。

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