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ー至福ー172
もしかしたら雄介の場合には、春坂に居た期間というには俺達からしてみたら少ないのだから、あまり思い出というのは少なかったのだから、あまり気にしてないのかもしれない。
そう雄介は元は関西方面出身で、大人になってから春坂の方に来ていて、それでレスキュー隊員になった時に一時は実家がある関西方面に戻っていた事があったのだから。 それからまた親父達が雄介の事を春坂に戻してくれたのだけど……確かに、和也に比べたら、雄介は春坂に居た期間というのは短かったのだけど、それでも春坂という場所に思い出というのはあるだろう。 それに俺と出会った場所でもあるのだから。
しかし今日の雄介というのは本当に大人しいと思う。 心なしか俯き加減でご飯を食べているように思えるからだ。 それにそもそもいつも元気な雄介が話に入って来ない事自体がおかしいような気がする。
そこで心配になった俺は、雄介の事を覗き込むようにして、
「雄介?」
と呼んでみた。
「え? 何?」
そう慌てたように返事をして俺の事を笑顔で見てくれていた。 そこには全く違和感を感じる事はなかったのだけど。
「どうしたんだ? 何だか、急に雄介らしくないんだけどな」
「え? あ、大丈夫やって……。 なんかなぁ、ちょっと、頭がボッーとしとるだけやからな。 ほら、夏やから、熱中症かもしれへんかなぁ?」
「え? あ、そっか……。 じゃあ、また、頭が痛いのか?」
「あ、いーや……今は頭なんか痛くあらへんで……なんていうんかなぁ? ただ、ボッーとしとるだけって言ったらええかな?」
「そっか……」
まぁ、確かに今のこの季節。 熱中症になる人というのは多い。
春坂病院で働いている時だって、夏になると毎日のように熱中症で運ばれて来る患者さんというのは多かったのだから。
そう言われてみればそうなのかもしれない。 ここ連日雄介が頭痛になっていたのも熱中症になってて頭痛を起こしていただけなのかもしれない。 と思った。
だけど家では熱中症になる要因となる事はないようにも思える。
いや雄介の場合には、毎日のように洗濯をしてくれているのだから、外に出ている時が俺達よりかはあるような気がする。 それを考えると、雄介の場合、熱中症になる可能性は高いという事だ。
「ま、熱中症ぽかったら、午後からの診療は俺に全部任せてくれたらいいよ……。 涼しい所で休んでれば治るだろうしさ」
「え? あー……ほな、休ませてもらうな」
そう笑顔で言う雄介。 そこに安心する俺。
軽い熱中症位なら体を冷やして寝てれば治るだろう。
「午後からの診察は午前に比べたら少ないっていうのか、殆ど来ないと思うから、和也と二人だけでいいしさ……。 寧ろ、和也か裕実か? どちらかが居てくれればいいかな?」
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