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ー至福ー171
「そうそう、春坂市にある高速で玉突き事故があったらしいぜ」
「春坂でかぁー……そうなんやねぇ……」
何だかあまり興味無さそうに答えている雄介。 そこに疑問に思いながらも俺の方は再び新聞を読み始める。
俺からしてみたら新聞を読むのが日課みたいになっているのだから、文字を読む事は全く苦ではないからだ。
その記事をよく読んでいると、昨日の昼にその玉突き事故というのはあったようだ。 春坂レスキューに春坂病院と俺からしてみたらこう懐かしいワードが書いてあったような気がする。
確かに俺達はその二ヶ月前に春坂市にも住んでいたし、今から約一ヶ月後には春坂に戻る予定でもある。 それに自分が生まれ育った街なのだから、こう懐かしがってしまうのは仕方がない事なのかもしれない。
それに春坂レスキューは雄介がいた消防署でもあるし、春坂病院は俺達が働いていた場所であるのだから懐かしいと思うのはいいだろう。
今まであそこで忙しい日々を送っていた事でさえ今は懐かしく感じてしまっている位なのだから。
本当に春坂にいる時っていうのは、毎日のように忙しかったようにも思える。
診察に夜勤でだ。 それに雄介だって初めて俺の病院に運ばれて来て、初めて雄介と会った場所なのだから。
それから雄介に告白されて、俺等は恋人同士になった場所でもある。
そう考えていたら、雄介が、
「ご飯、出来たでー……」
と和也達の事を呼んでいた。
和也達もその雄介の声に反応し、テーブルへと来るのだ。 そこで和也が急に話し始める。 確かにいつもの事なのだけど、今日は、
「あのさ……さっき、お昼の情報番組でやってたんだけど、春坂で玉突き事故があったんだってー?」
「俺もそれ新聞で読んでたよ」
「そんな事故があったんだったら、俺達いつも必死になって患者さんの事を助けてたんだよなぁ。 って思い出すよ」
「そうだよなぁ。 俺もそんな事を思い出したよ。 ま、和也の場合、もう春坂に行くっていう事は、もしかしたら無いのかもしれないけど、俺の場合には後一ヶ月もしたら行くからなぁ」
「まぁな。 俺の場合には、確かに何かが無い限りは、もう、春坂には行かないだろうからな。 そっか……望達の場合には後一ヶ月もしたら、あの春坂に戻るんだったな」
そう俺は和也と話をしていたのだが、そこで何か違和感を感じる。
だっていつもの雄介だったら、和也と会話しているからだ。 そうこういう話をする時っていうのは大体雄介と和也が会話するのがメインで俺と和也が会話をしている方が珍しいと言う所だからだ。
そこに疑問に思いながらも、俺は仕方なく和也と会話を続ける。
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