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ー至福ー170
もう暫くしたら、暫くの間、診療所から離れなきゃいけない俺達。
確かに俺と雄介に関しては二ヶ月位しかいられなかったけど、たった二ヶ月の間に本当に色々な事があったような気がする。 だからなのかちょっぴり寂しい気がして来た。 いや結構寂しいのかもしれない。
だけど俺と雄介は自分達の夢の為に今回は春坂に戻ると決めたのだからそれはそれでいいだろう。
俺の方は気持ち的にフッと笑うとパソコンの方へと視線を移す。
ただ単に俺と雄介は二ヶ月以上前の生活に戻るだけだ。
どんな風になるのか。 っていうのは今の所想像は出来ないけど、春坂での暮らしはまたまた大変なような気がする。
先ずは美里に代理出産に関して真剣に頼まなきゃならない事だし、それからもまた美里のフォローに入らないとならないだろう。
先ずやる事はいっぱいあるのだから、とりあえず今はこのゆっくりとした空間を満喫した方がいいのかもしれない。
やっと島の暮らしに慣れて来た矢先の事だけど、今の俺というのは雄介とずっと一緒にいて良かったと思えるのだから、それはそれで全然構わないと思っている。
それから昼までに患者さんは来なかったのだから、俺は和也に声を掛けると、和也は裕実に声を掛け裕実は雄介に声を掛け午前の仕事は終了するのだ。
診療所と家の間にある仕事用のロッカーへと白衣をしまうと家の方へと向かう俺。
「ほな、今日はそうめんな!」
そう言い出して作り始める雄介。
確かにこんな暑い日というのは、そうめん位でいいのかもしれない。
俺はダイニングテーブルに座って雄介がいるキッチンの方へと視線を向ける。
本当に雄介っていうのは、毎回料理を楽しそうに作っているようにも思える。 でも、それだけ雄介の方も料理を作るのは楽しいっていう事なのであろう。 俺の方は別にこう料理を作りたいとは思わないのだから余計になのかもしれない。
俺の方は朝同様に新聞を開いて読み始めた。
ホント、いつもと変わらない内容だ。
相変わらず、毎日のように事件や事故は絶えないという事だろう。
そこで目に入って来たのは、『春坂』という文字だった。
「……春坂!?」
そう思わず声に出てしまった俺。
「……へ? 何?」
そう言って来るのは雄介だ。 ま、雄介は俺からして一番近くにいるのだから、そんな俺の独り言も聞こえてしまうのであろう。
「え? あー……」
その雄介の反応に、俺の方は、
「なんかなぁ、春坂で大きな事故があったらしいぞ」
「春坂で事故?」
そう疑問そうな感じで聞いて来る雄介。
まだちゃんと説明してないから雄介の方は分かっていないのであろう。
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