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ー至福ー174
確かに今の季節は熱中症もあり得るのかもしれないのだが、本当にこの前からしょっちゅう頭が痛いと言っているのだから。
雄介が海で溺れてから一旦俺と雄介は春坂に行って、検査して来て大丈夫だったのだけど、それでもやはり雄介は数時間は海の中で彷徨っていたのだから、体が無事ではなかったという事なのかもしれない。
でも検査した時だって俺も雄介も新城もMRI画像を見た時にだって異常はなかった筈だ。 これが医者一人で見ていたのなら、もしかしたら見落としというのがあるのかもしれないのだけど、医者でしかも現役の医者三人でそれを見ていて見落としというのはヤバい状況であるのだから、そこは本当に有り得ない所なっていう所だ。
後考えられるのは、あの時は反応はなかったものの、やはり今になって頭の中で血栓が出来てしまったとか、今になって脳内で出血が起きているとしか考えられない。 もしそうなっていたとしたら、今日にでも春坂に向かわないと間に合わないだろう。
俺は難しい顔をして腕を組んで考えていたらしく、
「どうしたんですか? 眉間に皺寄せて……何か考え事でも?」
「え? あ、大丈夫だからさ……」
その時のは俺の方は裕実に向かって笑顔を向けるのだ。
「でも……いつも以上に今の望さんって、難しい顔をしてましたよ。 しかも、眉間に皺寄せて、本当に難しそうな表情してましたからね……」
「え? あ……」
本当に裕実というのは、そういう所に敏感っていうのか、直ぐに顔色を見て色々と聞いて来てくれる。
確かに看護師という仕事をしている以上、そういう所に敏感なのであろう。 そういう所、和也もそうなのだけど、裕実の場合には真面目さというのがあるのだから余計になのかもしれない。
「もしかして、雄介さんの事ですか?」
そうサラッと悩んでる事を聞いて来る裕実。
そんな所は心の中を読んでくれているようにも思える。
そこに軽く息を吐くと、
「まぁな……」
と軽く言うのだ。
「なんていうのかな? この所、雄介の様子がおかしいっていうのかなぁ?」
俺の方は簡単に裕実へと言ったつもりだったのだが、裕実の方は、
「確かに、ここ数日の間、雄介さんおかしいですよね? 連日頭痛になってるみたいですし、さっきは話してませんでしたしね」
「あ、ああ……ま、そういう事だ……」
「前回、春坂に行って検査した時には何もなかったんですものね」
「ああ、何もなかったんだよなぁ」
「しかも、新城先生と雄介さんと望さんとで検査結果を見てたんですもんね。 そんなプロ中のプロの方が三人で見ても何も異常がなかったんですもんねぇ?」
「あ、ああ……そういう事だ」
しかし裕実との会話というのは何でこうもスラスラと言えるのであろうか。 俺の方は本当に嘘偽りなく裕実には話しているようにも思える。
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