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ー至福ー178

「あ、まぁ……そういう事になるな……」  そう俺が考えながら言っていると、丁度窓から西日が部屋へと差し込んでくる。  夕日っていうのは、俺達が生きている中で何年経っても変わらないもんだ。  もう地球という星は何億年、いやもしかしたら何兆年と時が経っているのかもしれないのだけど、人類というのは何億年前に出来たばかりで太陽に比べれば全くもって若いと言えるだろう。 そして人間っていう生き物はそのほんの一瞬でしか生きられない。 いやそのほんの一瞬しか生きられないから頑張って頑張ってその一日を生きていこうと思うのであろう。 「あのさ、もう、そろそろ和也がご飯出来るって言っていたから、俺はお前のことを呼びに来たんだけど」  今まで窓の方に視線を向けていた俺だったのだけど、優しい笑顔で雄介の方へといつの間にか視線を向けていた。  だが雄介の方は一瞬眉間に皺を寄せていたのだけど、もう次の瞬間には、半身を起こして、 「そっか……そういう事な。 望……俺ん事、起こしに来てくれて、ありがとうな」  そう言って雄介は俺の体を抱きしめて来る。  この時一瞬俺の鼓動が高鳴ったのが分かった。  まだまだ俺は雄介に心をときめかせる事が出来るているのであろう。  それと自然と雄介の口から出て来る、感謝の言葉に安心しているのかもしれない。  そう感謝の言葉っていうのは、普通人なら照れ臭くてなかなか言えない言葉だけど、雄介の場合には本当に凄く自然に言っているのだから凄い事なんだと思う。  俺からしてみたら、全くもって、そんな簡単に感謝の言葉なんて出てこないのだから、きっと凄いと思ってしまうのであろう。  そして俺の方にも少し変化が出て来たというのか、最近はもう雄介からそういう事をされても逃げるっていう事はしなくなったようにも思える。  付き合い始めた頃なんか、直ぐに雄介から離れてしまっていたのだから。 そこは雄介が俺の事を変えてくれたのであろう。  どんなに俺が逃げてしまっていたとしても、雄介の場合には別に怒る訳もなく、ただただ俺が大人しく雄介に抱き締められるのを待っていたようにも思える。  それだって本当に簡単な事じゃない。  俺が雄介から逃げてしまっても、それでも雄介は来る日も来る日も諦めずに頑張ってくれていた証拠なのであろう。  だから俺は、 「だって、そこは俺達が恋人同士だからだろ? それに、もう直ぐ、俺達って結婚するんじゃねぇのか?」  そこで俺は雄介に甘えるかのように、雄介の肩へと頭を乗せるのだ。

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