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ー至福ー177

 本当にこの島に来てから、いや雄介と恋人同士になってからというもの、毎日のように悩んでいるような気がする。  悩んでる日々が嫌だって言っている訳ではない。  雄介と恋人同士じゃない時代、平穏無事な暮らしに飽きて来ていたのだけど、まさかここまで大変だとは思っていなかったという事だ。  だけど今は確かに毎日のように悩ましい日々を送っているのだけど、それだって俺からしてみたら苦痛とは思ってないのだから。 寧ろ雄介に出会えて良かったと思っている位だ。  それから暫くして午後の診察の方はたった数人で終わる。  診察所の方はいつもそういう感じでもある。  俺と裕実が診療所の方を終えて、家の方へと向かうと、和也がご飯を作っていた。  こうやって成人になってから六時位から七時位にご飯が食べれるのは、この島に来てからであろう。  春坂で仕事をしている時っていうのは、本当に何時に仕事が終わるなんて事、全くもって分からないのだから、夕飯が夜中になってしまう事なんてざらなのだから。 「今日は和也が作ってくれてるのか?」  そう言いながら俺の方はいつものようにダイニングテーブルの方へと座ってしまっていたのだ。  癖っていうのはそういうもんだろう。 「まぁな……」 「そっか……。 そう言えば、雄介の方は大丈夫なのか?」 「ああ、大丈夫みたいだよ。 あ! そうだ! そろそろ、雄介の事、起こして来てくれねぇかな?」 「あ、え? そうだな……」  和也にそう言われて俺は二階にある寝室の方へと向かう。 「雄介、大丈夫そうか?」  今日の俺は珍しくこう何も恥ずかしがらないで雄介に声を掛ける事が出来たような気がするのは気のせいであろうか。  すると薄手布団が上下へと揺れる。 これは雄介がきちんと呼吸をしているっていう証拠だろう。  そこに安心する俺。  そしてベッドサイドへと腰掛けると、雄介の前髪を撫で雄介のその寝顔に微笑む。  何だか、もう俺達っていうのは、十年以上は一緒にいる筈なのに劣ってないように見えるのは気のせいであろうか。  寧ろ、未だに雄介という人物は筋肉もしっかりしてるし、顔もそんなに老けているようには見えないからなのかもしれない。 いや毎日のように見ているから老けているのが分かっていないからかもしれない。 人間ってそういうもんだろう。 「雄介……ご飯だってよ。 和也がそう呼んでるからさ……」  そう普通な声の大きさで言う俺。  すると雄介の方は、 「ん?」  っていう返事をすると、ゆっくりと瞳を開けるのだ。 「へ? 朝か?」  そんな起きたばかりだからなのか、そんなボケをかます雄介に俺の方は吹き出す。 「違うよ……だって、今日はお前は頭が痛くて休んだんだろ?」 「あ、そうやったな……ほな、今は夕方なんか?」

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