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ー未知ー8
「もしもし、姉貴か? あんなぁ、この前も話したけど……」
雄介がそこまで話をすると急にムッとしたような説教みたいな言葉が美里の口から出て来たような気がする。
『雄ちゃん……あのね、真面目な話をするんだったら、なんていうのかしらねぇ……そんな口調じゃなくて、もうちょっとちゃんとしたような口調での方がいいんじゃないのかしら? これが、私じゃなくて他の人に頼む事なら尚更だと思うけど……』
本当に美里さんという人は雄介お姉さんっていう感じではなく、お母さんみたいな人なのかもしれない。
そして雄介の方は、その美里さんの言葉に深呼吸をすると、改まって、
「姉貴……マジで真剣な話があるんだけど、聞いてくれるか?」
そう言う雄介は気持ち的に標準語に近い言葉を使っているようにも思える。 美里さんに注意を受けた直後だったからであろう。
雄介は確かに普段の言葉遣いは関西弁かもしれない。 だけどもう東京の方に来て、大分長いし医者として働くようになったのだから人と話す事が多くなって来たのだから、標準語を使う事が多くなったからこそ慣れて来たのであろう。
その雄介の真剣な口調にやっと美里さんの方は雄介の話を聞いてくれるようになってくれたようだ。
「前に話したと思うのだけど……本気で、望とは結婚したいと思ってるし、勿論、望との子供も欲しいと思ってる。 そこで、俺と望とで真剣に話し合った結果、姉貴に代理出産を頼みたいと思ってる。 俺と姉貴は兄弟で、遺伝子は一緒なんだから、姉貴に頼めば、俺の家族の遺伝子が入ってる訳だし。 マジでお願いします! いや、本気でお願いします!」
雄介はそこまで言うと、美里さんに向けて頭を下げるのだ。 いや正確には、自分のスマホに向けて頭を下げていた。 俺の方も思わず雄介の後に続いて、美里さんには見えないであろう。 と思いながらも頭を下げる。
暫くの間の後、美里さんは、
『だけど、私の方は、まだまだ、琉斗の事も育てて行かないとならない訳だし、それに、前にも話したけど、悪いけど、私の方は高齢出産に入ってるのよ。 高齢出産になると、それだけのリスクがあるっていう事も分かってるのかしら? 赤ちゃんが病気になりやすかったり、または生きて来られなかった赤ちゃんもいるのよ……。 そういう事になった時に、貴方達は耐えられるの!? 私的にはそこも問題なのよね。 特に、雄ちゃんはそう! 貴方の場合、優しい性格だから、もし自分の子供がそうなってしまった場合、貴方の心の方が耐えられるかどうか? っていうのが心配な所なのよ。 そこの所は覚悟とかっていうのは出来ているのかしら?』
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