515 / 855

ー未知ー10

 俺の方はもうあまり産婦人科の知識というのは無いのだけど、雄介の場合にはまだまだ知識的にも新しい話しだろう。 「ああ、分かってる。 流石に産婦人科の方も俺の方にも知識あるからな。 寧ろ、俺は小児科医だから、既に生まれて来る前から病気だって分かっていれば、生まれた直後からは、もう、小児科医の担当になるからな。 そういう所は本当に今まで色々と見ても来てるし、実際、生まれて来る赤ちゃんの立ち会いというのか、生まれた直後に手術とかっていうのもした事あるしな」  俺の方は今の雄介の言葉に変に感心してしまっていた。  確かにそうだ。 雄介がやっている小児科医というのは、本当に生まれた直後の赤ちゃんから高校生の終わり位までは担当していたのだから。 確かに雄介の仕事というのは、そこまで見ている。 しかも雄介がやっていたのは小児科医でも外科分野だって言っていたような気がするからだ。  そこで少しは美里さんの方は安心したのだが、まだ何か言いたそうな感じでもある。 『そうね、貴方達の子供が何も無く生まれて来たとしても、生まれて来てからも子供を育てて行くっていうのは大変な事なのよ』 「そこの所も大丈夫だって……ずっと、琉斗の事見て来たしな……」 『でも、それは、あくまで身内であっても見てただけでしょう? 赤ちゃんからとなると、ミルクも数時間置きに上げなきゃならない、おむつ替えもしなきゃならない。 一日中赤ちゃんっていうのは見てなきゃいけないし、歩くようになってからの方が、もっと大変なんだから……。 何でもかんでも赤ちゃんっていうのは口にしてしまうし、握れる物は何でも握ってしまうしね。 目を離している暇なんか無いんだからね』 「それも、分かってる。 それに、俺等だって、一回、琉斗の事、預かった事があったしな」 『そうだけど……貴方達がどれだけ世話をしたか? で、子供っていうのは性格が変わって行くもんだからね。 琉斗の場合は、割と真っ直ぐでいい子になって来たけど……中には我儘で親に迷惑ばっか掛けてしまう子に育ってしまう場合もあるんだからね』 「そういや、琉斗で思い出したんやけど、この前、琉斗に会ったわぁ……めっちゃ、カッコ良くなって来てたなぁ」  きっと最後の方は世間話になって来てたからなのか、雄介はいつもと変わらないような口調で話をしていたようにも思える。 『そうでしょう? ホント、中学生になって益々カッコ良くなって来たわぁ。 って思うわぁ……』  きっと電話の向こう側にいる美里さんは顔が緩みっぱなしなのであろう。 そんな事を想像しながら俺と雄介は視線を合わせて微笑むのだ。

ともだちにシェアしよう!