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ー未知ー27

 俺達の婚約指輪っていうのは、別にダイヤが付いているようなじゃなくてもいい。 ただ単にシルバーリングでいいと思っているのだから。 それで左の薬指に付いていれば、もう相手が雄介に寄って来る事は無いのであろう。 だからそんなに高い物は選ばない。 ただリングの中に名前を彫って貰いたいという欲だけはあったのだから、本当にそれだけでいい。  しかし何でか同性同士であっても、婚約指輪を買う時には胸の鼓動が早くなる。 緊張、嬉しさ、そういう感情が体中を渦巻いているからなのであろう。  その場で決めたシルバーリングは名前を彫ってもらうのもある為、二週間程掛かるようだ。  とりあえず婚約指輪を買って満足した俺達は再び車を走らせる。 「ほな、今日はこのまま、高級レストランに行こか? だってな、せっかくスーツ着てきたし……」 「え? そういうのは指輪が出来てからでいいんじゃねぇ? どうせまた、このスーツ着て宝石店に行かないといけないんだろうしな」 「ま、確かにそうやんなぁ……ま、そん時までに俺がレストラン探して予約しておくわぁ……」 「ああ……」  その雄介の言葉に急に何だか恥ずかしくなって来て、窓の外を眺める俺。  窓の外はオレンジ色に輝き、ビルとビルの間へと太陽が沈んでいく姿が見えるのだ。  いつか見た夕陽もビルとビルの間に太陽が沈んで行っていたようにも思える。  そうだ。 雄介に告白されて俺が一人病院の屋上で悩んでいる時に見た夕陽もこんな感じだったのを思い出す。 確かに太陽というのはあまり変わってないようにも思える。 人間が生まれる前から地球を照らし続けていた太陽。 地球にどんな事が起きようとも太陽は変わらず地球をた照らし続けて来ていた。  俺が悩んだあの日も、俺達の事を見守っていた太陽。 でも夕陽っていうのは、何でか寂しい気持ちにさせてくれるのは何でだろうか。  そんな想いに浸っていると、今度雄介は、 「ほな、飯何する? 流石に俺の方は、お腹空いて来たわぁ……」  と車内に大音量でお腹の音を鳴らす雄介。  一瞬、俺の方は「え?」とは思ったのだけど、今はもうそんな事を気にしないと言った風に、 「んじゃ、お前は何食べたいんだよ……」  とちょっとデリカシーの無い部分に怒りながらも質問をすると、 「ほな、望……!」  そう明らかにふざけて言っている雄介に気持ち吹き出してしまう俺。 「……はぁ!? ってか、そういうの古すぎねぇ?」  そういう俺の突っ込みに、雄介の方は逆に笑ってしまってたのだ。 「まさか、望にそんな突っ込みされるとは思ってなかったわぁ……」 「お前が、バカな事を言うからだろっ!」  逆に恥ずかしくなったのは俺の方なのかもしれない。 そう顔を真っ赤にしてまで雄介に抗議していたのだから。

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