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ー未知ー28
「でも、俺の方は、マジでなんだけどなぁ……」
「へ?!」
その雄介のマジな発言に俺が裏声を上げるに決まっているだろう。
「なんやろ? 確かに腹は減ってんねんけど……婚約指輪も買ったし、変に俺の方は満足してるんやけどなぁ……まだ、なんか足りないって思うっておったら、望やっ! って思うたんやけど?」
「はぁー!?」
そう盛大に俺の方は抗議の声を上げるのだ。 雄介の方はその事について本気なのかもしれないのだけど、俺の方はこの雰囲気ではあり得ないと思っているからであろう。
「ほな、このまま、人気のない所に行って、車の中でか?」
「はぁ?! スーツが汚れる……」
「ほな、ラブホしか無いやんかぁ……」
「誰が行くって決めたんだよ……」
「俺かなぁ?」
そんな答え方に今の俺は何でか笑いそうになっていた。
雄介とこういったノリで話すのも大分慣れて来たようにも思えるからなのかもしれない。
だからなのか段々とクスクスとして来ているのは気のせいであろうか。
「なぁ、せっかく、都会の方に戻って来たんやし、ラブホとか行かへん?」
本当、今日の雄介のテンションっていうのはいつも以上に変に思えるのは気のせいであろうか。
いやきっと俺との婚約指輪を買って、テンションが上がっているのは間違いないのかもしれない。 だから変にテンションが上がってしまっているのであろう。 それに今日は久々に車に乗って二人だけで出掛けているっていうのもテンションが上がる原因でもあるのかもしれない。 実際、俺だって変にテンションが上がってしまっているのだから。 そんなテンションなら、もう雄介に合わせてラブホに向かっちゃえと思った俺は、
「んじゃ、やっぱ、ラブホに行くか?」
とホント俺の方もテンション高めな感じで言うのだ。
「よっしゃー! ほな、ラブホなっ! この車は今からラブホ行きに変わりまーす!」
と本当に雄介も変なテンションでラブホ方面と車を走らせる。
幹線道路から外れると、本当に都会という街は静まり返ってしまう。 さっきまであんな賑やかだった街並みも、ネオンは輝いてはいるものの人の気配みたいなのは一気に無くなってしまうもんだ。
車をゆっくりと走らせ、前に良く通っていたラブホへと車を向かわせる。
そこは前から利用させて貰っている、同性専用のラブホだ。
俺達の他にも数台車が止まっている事から、俺達の他にも利用者が居るという事だろう。 でも、何だか前にもまして増えているのは気のせいであろうか。 それだけ世間も同性同士に関して認知度というのが上がって来たからなのかもしれない。
俺達は車を降りて、駐車場上にある部屋へと向かう。 このホテルは、客同士があまり接触しないようにと、個々に駐車場があって個々に部屋があるといった感じなのだから。
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