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ー未知ー31

「は? え?」  そして俺は俺の背後に居る雄介の事を見上げる。 「あー、そういう事なぁ……」  と雄介は独り言のように言うと、 「ほな、早く、風呂入ろっ!」 「え? あ、ああ……?」  とは答えるものの、俺の方は急にいつもに雄介に戻ってしまった雄介にハテナマーク状態だったのかもしれない。 だって首を傾げてしまっていたのだから。  雄介に背中を押されながらもお風呂場へと向かう俺。  そして脱衣所で下着だけを脱いで、お風呂場へと向かうのだ。  そしていつものようにシャワーを浴び始める俺達。  しかし本当に雄介っていうのは優しい。 自分よりも俺の方をシャワーの下へと向かわせ、体が冷えないようにしてくれているのだから。  泡を流す時だけ雄介はシャワーの元へと来て、泡を洗い流すだけだった。  体にシャワーの熱が当たってないからなのか、気持ち的に鳥肌が立ってしまっているように見えるのは気のせいであろうか。 「なぁ、もう少し、シャワーでお湯浴びたらどうだ?」  と俺は声を掛けるものの、 「へ? こんなん大丈夫やって……だってな、後で望と体重ね始めたら、熱くて熱くてしゃーなくなくなるしな……」  一瞬その言葉に俺の方は顔を真っ赤にしたものの、そこで軽く息を吐き、 「それは、あくまで後での話だろ? んじゃ、今はどうすんだよー。 ホント、雄介は俺に優しいのは嬉しいんだけどな。 自分の身を犠牲にしてまで優しくはして欲しくはねぇんだよ。 寧ろ、俺に優しくし過ぎて、早死にしてしまう方が、俺からしてみたら嫌なんだけどな」  そこは何でかいつもに増して真剣に雄介にと伝える俺。  だってそこは本気だからだ。 それにそういうのはちゃんと雄介に伝わって欲しいと思ったからなのかもしれない。  雄介は暫く考えた後、 「……そやな。 確かに、望の言う通りやわぁ……。 これからは、望の言う通り、自分を犠牲にしてまで人に優しくするのは止める事にするな……」  俺のその言葉で雄介がそれについて反省してくれたのなら、いいのかもしれない。 俺の方は雄介に向かい微笑むと、 「じゃあ、雄介は少しお湯で温まってからお風呂から出て来る事っ!」  と少し強く念を押し、俺の方はお風呂場を後にするのだ。 そして脱衣所に置いてあるバスローブを身に纏う俺。  しかし俺の方はまだバスローブっていうのに慣れてないような気がする。 下着を身に付けてないと下からスースーとしたような風が入って来ているように思えるのは気のせいであろうか。 寧ろ、風は中に入って来てないのかもしれないのだけど、空気がそうさせているのかもしれない。  雄介が出て来るまで俺の方はベッドの端に腰掛けて、テレビを見上げる。  確かにこういう所のテレビなのだから、そういったチャンネルが多いのだが、もう今日はそういった気分で来ているのだから、俺はボーと見る事にしたのだ。

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