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ー未知ー64
全くもって俺の方が納得してないのだから。
確かに自分から意地悪な事を仕掛けておいて、意地悪なことを雄介にされて頬を膨らませてしまっているのは確かに俺の方なんだけど。 それでも何でか納得いかないのだから、俺の方は未だに頬を膨らませたままでいる。
「……今日の望なぁ……俺からしてみたら、いつも以上に可愛かったんやって……せやから、今度はこっちも意地悪なこと言うてもうたら、どないな反応するんかな? って思うてなぁ」
「あ……」
そういう事だったのか。 確かに俺の方も雄介にちょっと意地悪なことをしてみようと仕掛けたのだから、雄介の方ももしかしたらそんな俺の様子に逆に仕掛けてみてどんな反応するのか。 っていうのを見たかったのかもしれない。
雄介の気持ちが分かると、再び俺の方は体から力を抜くのだった。
「……そういうことなぁ。 そうだな、今のは俺が悪かった……。 俺の方も多少悪戯心で雄介に仕掛けたんだしな」
そう今日は雄介に対して素直な気持ちになれたような気がする。
本当に俺から誰かに謝るっていうことはあまりしない。 だけど今日の俺っていうのは何でか雄介にはこう素直に謝れたような気がする。
それはきっと雄介が今まで俺に色々と尽くしてくれて来たから相手のことが分かっているということだろう。
雄介は今まで本当に俺に色々とやって来てくれた。 例えば、何かあれば謝って来てくれるし、滅多なことでは怒らないし、絶対的に俺には優しくて一途だし、本当に本当に今までの人生の中で俺からしてみたら雄介が一番の理解者だということだ。 だからなのか最近ではそんな雄介に何か一つでも答えて上げたいと思っているのかもしれない。
じゃあ、今日は少しでも素直な気持ちを返して上げたらいいのではないだろうか。
「なぁ、雄介……雄介は、素直な俺といつもみたいにツンデレな俺とでは、どっちが好きなんだ?」
本当は素直な俺になろうと努力してはみたのだけど、結局いつもの俺が出てしまっていたようだ。
そう素直に質問したかったら、きっと、
『なぁ、雄介……一番気持ちいいところ触ってくれよ……』
とかって言えば素直な俺になれたのであろう。 だが流石に俺の方はそこまでストレートな言葉では言えず、ああ言ってしまったのかもしれない。
「ん? そやなぁ……?」
そうちゃんと俺からの質問に答えてくれようとしてくれている雄介。
「そんだったら、素直な望にしてもらおうかな? だってな、ツンデレな望はいつも見てきてるし、そうやって、二択にしてくれるんやったら、たまには素直な望を見てみたいのかもしれへん……」
そう甘く低く優しい声で言って来てくれる雄介。 そんな雄介にもドキドキしてしまうのは未だに俺は雄介に恋しているからなのであろう。
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