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ー未知ー114

「あ、雄介……」  と言葉にしようとしたが、どうやら俺の性格上、無理だったようだ。  俺が雄介のことを呼んだからなのか、雄介の方は俺に視線を向け、キョトンとしたような顔で見てきた。  そこで目を点にしてしまったのは俺の方だ。  本当に、自分の方が情けない。  心の中では雄介のことを褒めようと思ってはいるのに、いざとなるとできないのだから。  とりあえず俺の方は雄介から視線を逸らして、「あー、だからだな……」そう言って誤魔化してしまっている。  そんな俺にクスッと笑って、そして俺の体をギュッと力強く抱きしめてくる雄介。  一瞬、その雄介の行動が分からなかった。 何で、雄介の方が俺の体を抱きしめてきたのか?  確かに、普通こういう場合、俺の方が雄介のことを慰めて上げると思うのだけど、何でか今は雄介の方が俺のことを慰めてくれているような気がするからだ。 「あー、えっと?!」  未だに俺の方は混乱しているのか、雄介から視線を外したままだ。 「ん? ええんやって……」  そう言って未だに俺のことを抱きしめている雄介。 「え? あ、ぅん……」  雄介がそう言うのだったら、いいかという気持ちになってくる。  しかし、こうして雄介に抱きしめられると、未だに俺の鼓動は早くなってくるのだ。  本当に俺の方は雄介のことが未だにちゃんと好きだっていう証しだろう。  暫くして雄介が俺から離れ、俺の方を見つめて言う。 「なぁ、明日……姉貴がここに来るんやったら、お茶菓子とかお茶とか用意しないとな?」 「あ……」  全くもって、そこの所は気にしてなかった俺。  確かに、こう家にお客様を呼ぶのだから、お茶は用意しないとならないだろう。  俺の方は、家にお客様が来るなんて、本当に慣れてないから思いつかなかったからだ。  そう、俺の場合には高校生になった頃には、もう実家で一人で住んでいたのだから、お客様というお客様は家に呼んだことがなかったのかもしれない。 「ほな、何処行く?」  そう言って雄介は気持ちを切り替えたのか、早速外へと行く準備をし始めたようだ。 「流石に、デパート位の菓子じゃないといけないんじゃねぇのか?」 「あ、確かに、そうやねんなぁ……? ほな、久々にデパートにでも行ってみるか?」  その雄介の言葉に、急に思い出されたのは、昔記憶喪失のきっかけになってしまったデパートだ。 きっと今はリニューアルだとか他の会社が買い取ったとかで綺麗に直ってて、屋上遊園地なんかはないのかもしれないけど、そんな思い出がある場所でもある。

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