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ー未知ー113
どうやら、美里さんが不服そうにしていたのは、雄介が言った曖昧な時間設定だったらしい。 そこに俺は納得すると、雄介に向けて、手でサインしながらも小声で、
「一時にって、ハッキリ言った方がいいんじゃねぇのか?」
「あー! そういうことなぁー!」
そう、若干興奮気味に言う雄介に俺の方は睨みを効かせると、思わず手で口を塞いでしまった。
それから雄介は俺の言葉で、ハッキリとした感じで、
「では、俺の家に一時にお願い致します」
と美里さんにそう伝えるのだ。
『分かったわぁ……一時に雄ちゃんの家に向かえばいいのね……』
「そういうことでお願いします!」
そう言って再びスマホの前で頭を下げる雄介。
本当にどうしても人間って、目の前に相手がいなくても、スマホに向けて頭を下げてしまうものだろう。
そして俺の方も雄介の後に続くように、スマホに向けて頭を下げ、
「では、明日宜しくお願いしますね」
と言うのだ。
「分かったわぁ……。 雄ちゃん達がそう言うのだったら、明日、私は雄ちゃん達の家に行けばいいのね……」
美里さんがそう納得してくれたことに、俺たちは安堵の表情をしたのは言うまでもないだろう。 だけど電話を切るまでは油断出来ない所なのだから、最後まで引き締めていかないところだ。
とりあえず俺の方は大丈夫なのだけど、問題なのは雄介の方なのかもしれない。
雄介の方に向けて、俺の方は気持ち的に睨んで、心の中では『そのまま美里さんには、敬語で話せよー』と訴え続けるのだ。
一瞬、雄介は俺の顔を見て、怯んだように見えたのだけど、どうやら俺の表情で分かったらしく、
「では、明日、宜しくお願いします」
と最後にもう一度電話の向こう側にいる美里さんに言い、頭を下げ、
「じゃあ、明日は宜しくね」
そう美里さんが言い、美里さんの方が電話を切ると、そこで力が抜けたかのように椅子にもたれかかるのだ。
そんな雄介が今では愛おしいと思ってしまう。 だけど俺の性格上、クスッとするだけで、終わらせてしまっていた。
そこは俺の性格なのだから仕方がないだろう。
でも本当雄介には頭が下がる気持ちだ。
確かに、医者という仕事をするようになって、普段は標準語とか敬語というのが多くなったのかもしれないのだけど、やはり家族と話すとなると普段使っている関西弁が出てもおかしくはないのに、今の雄介は美里さんに注意されたからなのか、本当にずっと敬語だったような気がする。 いや寧ろ、美里さんの言うとおりなのだから、確かに雄介は頑張らないといけないのだけど。 それでも俺からしたら雄介のことを褒めたいところだ。
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