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ー未知ー112
「ウチって……?」
その美里さんの言葉に、俺と雄介は視線を合わせる。 一体、どういう意味で美里さんはそう聞いてきているのだろうか。
俺たち的には当然、『家』という意味だが、確か関西方面の女性の一人称というのが『ウチ』だったように思える。 しかも、『家』でも一人称の『ウチ』でもイントネーションは一緒なのだから、美里さんは一瞬何のことか分かっていないのかもしれない。
「あー、そういうことね……」
と雄介は美里さんが何を言いたいのか理解したようだった。 独り言を言うと、
「俺ん家 でってことやって……」
やはり慌てて答えたからか、ついついいつものように話してしまう雄介。 とりあえず、一瞬美里さんが黙ったようにも思えたのだけど、美里さんは咳払いをした後、
『とりあえずね、雄ちゃん家 ってことで大丈夫だけど……』
どうやら美里さんの方は咳払いで、今の雄介の口調は聞いてなかったようだ。
そりゃそうだろう。 本当に咄嗟の場合には、方言が思わず出てしまうものなのだから、気の知れた兄弟ともなれば余計になのかもしれない。
とりあえず雄介の方もその美里さんの咳払いで気づいたようで、
「そういうことなので、明日はよろしくお願いします」
そう思い出したかのように、スマホの前でも頭を下げる雄介。
その後に続くかのように、俺の方もスマホの前で頭を下げる。
『そういうことなら、分かったわぁ……。 時間の方は何時がいいのかしら?』
「それなら……」
とすぐに答えないところをみると、雄介の視線が俺の方へと向いてくる。
「ん?あ、そうだな……?」
俺の方は雄介のその視線に気づき、時計の方へと視線を向けると、小さな声で、
「午後からの方がいいんじゃないのか?」
と告げる。
「ああ、そうやなぁ……」
とその言葉だけで雄介の方は気づいてくれたのか、一回雄介は態勢を立て直し、
「明日の一時過ぎというのは、宜しいでしょうか?」
『一時過ぎ?』
こうなんとなく不満そうな声で言っているのは気のせいであろうか。 だが俺たちからしてみれば、お昼を食べてからというのか、午後からの方が時間がたくさんあるのだから、むしろそちらの方がいいと思ったからそうしたのだが、美里さんの方は本当に不満そうだ。
「あーと……」
きっと天井にまで視線を向けてしまっているのだから、雄介の方は言葉を選んでいるのであろう。 それに不満そうな美里さんを納得させなければならないのだから余計になのかもしれない。
「午後からの方が、たくさんお話ができるかと思って、そう、設定したのですけど……」
『そういうことなの? だけど……一時過ぎって、何で、こう曖昧な時間なのかしら?』
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