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ー未知ー168

 暫くして、雄介の呼吸が整ってきた所で、雄介は俺の腰を支えて中から自分のモノを抜くのだ。  その直後、雄介はベッドへとうつ伏せの状態で横たわる。  そんな状態の雄介に俺の方は不思議に思いながらも、雄介の背中を摩り始めていた。  本当に今の雄介は、精神状態が一番酷い状態になっているのかもしれない。  確かに雄介の場合、精神状態が一番ヤバい時期があった。 そう医大に入ってから、必死になって勉強していた時期にだ。 その時期は島に行く準備とかもあって俺の方も色々とやっていたから、同じ屋根の下に住んでいるのに、雄介とは毎日のようにすれ違いの生活を送っている時にも、雄介の精神がこんな状態の時があった。  意外に雄介の場合、精神的に弱い部分があるのかもしれない。  だけど普段は普段でさりげなく俺のことを守ってくれている姿を見ては、精神的に弱いわけではないのであろう。  いや今の雄介の行動が寧ろ当たり前なのかもしれない。 人間っていうのはヘコむ時にはヘコむ。 そうそれがたまたま雄介は今だというだけなのだから。 「な、雄介……大丈夫だって……」 「……ん?」  その何気ない俺の言葉に俺の方へと雄介は視線を向けて来る。  きっと『何が?』という気持ちなんであろう。 確かに俺の方も『何が?』を言ってないのだから当然なのだが。 どうしても俺の場合には、主語が抜けてしまう。 確かにこう真面目な話をする時に、俺の場合にはどうしても主語が抜けてしまうのだ。 そこはどうしても恥ずかしくて遠回しにいや相手に主語が抜けてしまっても分かって欲しいから抜けるのだけど、それはダメなんだと思ってはいる。 だけど未だにそれだけは抜けない、そう癖みたいなのかもしれないからだ。 「あー、だからさ、明日のこと?」  頑張って言ってみてはいるのだけど、やっぱり雄介の視線に合わせて言うことは出来てない。 「あー、明日のことなぁ……」  逆に変に雄介に明日のことを思い出させてしまったのかもしれない。  やっぱり俺からしてみたら、本当にそういう話っていうのは苦手ということであろう。  それを振ってしまった俺を責めたくなって来る。  再び時計の秒針の音しか聞こえなくなってしまった部屋に、俺の方は、難しそうな表情をしていた。 確かに今の話は自分から雄介へと振ってしまったのだから、自分でどうにか処理しなきゃいけないと思うのだけど、俺にはそんなに器用なところはない。 だから今変な空気が俺と雄介の間で流れてしまっているのであろう。  だが何でか急に雄介の方がクスリとしてしまっていた。 「ホンマ、望、ありがとうな……」  そう挙句、何でか俺にお礼を言っている雄介。 そこに俺の方がハテナマーク状態だったのだから。

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