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ー未知ー172

 しばらくして料理ができたのか、キッチンにあるカウンター席へと雄介は料理を運んでくる。  確かにさっき雄介が言った通り、雄介の目玉焼きは目玉の部分が潰れてしまっていた。  それがまさに今日の雄介の心を表しているように感じられる。  そのことを気にしながらも、俺も雄介も食事を口にするのだった。  このカウンター席で横並びになって食事をするのは何年ぶりだろうか。  さっき起きてここに俺が座ったから、今日はこの席で食事をすることになったのだろうけど。  普段はキッチンテーブルで食べているのだから。 わりといつも、キッチンテーブルでご飯を食べる方が多かったのかもしれない。  それにキッチンテーブルの方が正面を向いて食べられるので、表情を見ながら食事をすることができるが、カウンター席だと相手の表情があまり見られないのが難点かもしれない。  確かに、食事中の会話は家庭によって違うのかもしれないが、俺たちの場合、食事の時間は会話をしながらというのが多いので、相手の顔が見られないのは変な感じなのだろう。  しかし今日の雄介は無言だ。  本当に無心で料理を口にしていると言った方がいいのかもしれない。  だから部屋の中は静かだ。 聞こえてくるのは時計の秒針と外から聞こえてくる鳥の鳴き声くらいしかないのだから。  いつもは話をしているから、そういった音が聞こえていなかったのだろう。 「とりあえずなぁ!」  急に雄介が大きな声を出す。 それに驚いたのは俺だ。  雄介が今大きな声を出したのか、それとも静かだった空間にいきなり雄介が声を上げたから大きい声に聞こえたのかは分からないが、とりあえず俺は目を見開いたまま、雄介の方へと視線を向ける。 「……それで?」 「あ、あー……」  俺の言葉に、何でか今度は動揺してしまっている雄介。 言葉を詰まらせてしまっているのだから。  そして視線を元の位置へと戻すと、 「あのな……姉貴には、俺たちの関係については認めてもらってるやろ? だから、後は、代理出産について説得すればええんやからなぁ」  半分は俺に、半分は自分に言い聞かせるように言っているのかもしれない雄介。 「あ、ああ……。 多分、それで、いいんだと思うんだけどな」  と俺は雄介に笑顔を向ける。  すると雄介も俺の方へ視線を向けてくれて、笑顔になってくれる。  そこに何故かホッとする俺。 きっとそれは雄介のその笑顔に安心したからだろう。

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